第二五話 暗転前 ページ25
今回の仕事は、とある密入国者を捕らえる事。
只の密入国者なら軍警に任せるのだがどうやら異能力者らしく、探偵社に仕事が回って来た。
私と敦君で迅速に捕らえる手筈だったが、相手は中々厄介な異能力で、思いの外時間が掛かっていた。
そして、やっと相手の体力に限界が見え始めた時。
横から、黒い閃光が相手の喉を掻き切った。
そちらを見ると芥川君が居て。
……まぁ、今日芥川君が此処に来る事は知っていた。敦君と出会わせたくてわざと黙っていたのだけれど。
予想通り、敦君は激昂し殴り掛かろうとして、芥川君は唯一の逃げ道である入り口から外へ飛び出した。
予想外は此処からだ。
1週間前にポートマフィアを探った時には、今回は芥川君の単独任務と云う事だった筈だ。
しかし。
廃屋の外には情報には無かった2人の姿があって。
1人は知っているから良いものの、問題はもう1人だ。
……灰色のパーカーを羽織った、華奢な少女。
顔付きは少女と云う言葉が似合わない程大人びているのだが、耳が付いたフードのパーカーが幼さを醸し出し、其れを打ち消していた。
……最近新しくマフィアに入ったのだろうか?
こんな事になるのなら、怠らずに此の数日を探っておくべきだったと思わず舌を打った。
……様子を見るに、芥川君は彼の子にご執心らしい。
「敦君」
声を掛けると、敦君が此方に顔を向けた。
「パーカーの子の実力が判らない内は、手を出しては危険だ。もう1人の、樋口さんの方を捕らえてはくれないかい。芥川君も何だかんだ大切にしてる部下だからね、此方の条件を呑んでくれるはずだ」
敦君は一瞬目を見開き、そして決心した様に頷いた。
……しかし、私は又其処で自分の失態を悔やむ事になる。
今まで何も行動を起こさなかったパーカーの子が、敦君を止めに走り出したのだ。
此の展開を予想していなかった訳では無い。しかし、敦君には到底追い付け無いだろうと踏んでいた。
だが。
……速い。敦君の方が距離が長い事を差し引いても速く、難なく追い付いてしまう。
そして、彼女が敦君に手を伸ばした瞬間。
・
敦君が、呻きながら地面に崩れ落ちた。
……何が起こったのか、一瞬判らなかった。
しかし当の本人も顔を青くし、敦君を見て震えている。
辺りに奇妙な沈黙が落ち、其れを破ったのは私が携帯で呼んでいた国木田君だった。
そして私が目配せをすると、国木田君は直ちに彼女に手刀を叩き込んだ。
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梓(プロフ) - 二つ結びの人さん» ありがとうございます…!励みになります! (2018年3月31日 10時) (レス) id: 72c3b0ba9c (このIDを非表示/違反報告)
二つ結びの人(プロフ) - こんばんは!!とっっても面白いです!!!この先が凄く気になります!これからも頑張ってください!!! (2018年3月28日 0時) (レス) id: 97c5c84046 (このIDを非表示/違反報告)
梓(プロフ) - 碧灯さん» 返信遅れてすみません…!そうです!住野よるさんの「よるのばけもの」をモデルにしています (2018年3月23日 22時) (レス) id: 72c3b0ba9c (このIDを非表示/違反報告)
碧灯(プロフ) - 初コメ失礼します! 質問なのですが、主人公の名前と異能力って 住野よる さんをモデルにしていらっしゃいますか? (2018年3月16日 19時) (レス) id: 391be2aaba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梓 | 作成日時:2017年8月13日 12時