第十四話 開始前 ページ14
其の練習の成果を披露するのは、人を殺害する時しか無いって云うことは痛いほど判ってる。
……人を殺すのは、悪いことだって事も。
でも。
何故か私は、申し訳なさそうな顔をして云われたその言葉を裏切る事は出来なかった。
……殺害に加担するのと同じじゃないか、と思うのに。
「………大丈夫です。体術の指南よろしくお願いしますね」
「……善いのか? 銃弾の的にされるんだぞ?」
尚もそう云う中也さんに、
「全然大丈夫です。……いつか体術で中也さん越えてみせますよ!」
と明るく返せば、中也さんはニヤッと笑った。
「望む処じゃねェか」
そうだ。其れがやっぱり中也さんらしい。
「……ンで、いつからするか? 首領に今日からやれって云われたんだけどよ。無理なら明日からでも善いぞ」
「今日からで善いです」
……芥川さん探す必要無くなったなぁ。
「じゃあ、行くか。着いて来い」
そう云って歩き出す中也さんの背中を追いかける。
・
歩きながら、ふと思い付いた様に尋ねられた。
「そういえば、住野が俺の名前判ったのって、2つ目の異能力か? 昨日は幹部の名前を教えて貰う暇も無かっただろ」
「……そうです」
「……首領が期待掛けるのも判るわ。異能力2つ持ちなんて初めて見たぜ」
……云われる度に、嘘をついているという罪悪感が湧いてしまう。
・
「此処だ」
着いた処は、音を漏らさないように作ってある頑丈な壁が特徴的な場所だった。
「どっちからやるか?」
中也さんの声が反響して響き渡る。
「中也さ………中原幹部の練習からお願いしても善いですか?」
ずっと『中也さん』と呼んでいた事に気付き、慌てて云い直すと、くすりと笑われた。
「中也で善い」
「え、でも……」
「いきなり云い直されたら違和感あるんだよ」
「いやそういうのじゃなくて……」
尚も引かない私に中也さんは、
「じゃあ俺もAって呼ぶから。其れなら善いだろ」
と妥協案(らしきもの)を提案する。
……これは私が折れないと駄目か。
「……判りました」
・
そこで、具体的な練習のやり方は聞いていない事に思い当たった。
「どうやってするんですか?」
「あぁ。……Aは適当に走るだけで善い」
其れを聞いてどんな練習のやり方なのか大体察した。
……これも首領の提案なんだろうなぁ。
マフィアにとって、論理的最適解、なんだろう。
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梓(プロフ) - 二つ結びの人さん» ありがとうございます…!励みになります! (2018年3月31日 10時) (レス) id: 72c3b0ba9c (このIDを非表示/違反報告)
二つ結びの人(プロフ) - こんばんは!!とっっても面白いです!!!この先が凄く気になります!これからも頑張ってください!!! (2018年3月28日 0時) (レス) id: 97c5c84046 (このIDを非表示/違反報告)
梓(プロフ) - 碧灯さん» 返信遅れてすみません…!そうです!住野よるさんの「よるのばけもの」をモデルにしています (2018年3月23日 22時) (レス) id: 72c3b0ba9c (このIDを非表示/違反報告)
碧灯(プロフ) - 初コメ失礼します! 質問なのですが、主人公の名前と異能力って 住野よる さんをモデルにしていらっしゃいますか? (2018年3月16日 19時) (レス) id: 391be2aaba (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梓 | 作成日時:2017年8月13日 12時