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モニターの青白い電子的な光に白い肌を照らされて、まるでお化けの様な佇まいで椅子に腰掛けた従兄は「想像以上だな」と呆れ返った様に呟いた。分かっていたなら止めてくださいよ、とはアンリさんの談である。
『他の棟も回るんでしょう？ どうしよう、その眼鏡とか借りてもいいかなお兄さん』
「ダメに決まってんだろ。他の棟は済ませてあるから、今日のAちゃんの仕事は終わり」
「ああ言った方が仕事が早くなる。つまり合理性だ」と真顔で淡々と述べる従兄に思わず呆けてしまう。本当にそんな細かな嘘が必要なのか、もしかしなくても私で遊んでいるでしょ。
きっと顔を顰めているだろう私を意にも介さず、「今日の残りのAちゃんの仕事は、」とお兄さんは机の引き出しを開いて中を探り出した。数秒前の話ともう矛盾していないか、と思う私の手に握らされたのはコンパクトなカードキーが一つ。
「部屋づくりをする事。それ部屋のキーね、GPS入ってるから基本離さないで持っておけ」
『うん……まあこんな時だしね。はーい』
「あとこれは襲われた時用な」
『わあ』
なんて見事なスタンガン。どう見てもスタンガンだな、と手のひらに乗った無機質な見た目の黒いそれに視線を落とす。歳頃の男の子に囲まれて過ごす訳だからこれくらいの備えはあった方が嬉しいだろうが、改めてそう思うと私って中々大胆な決断をしたのかもしれない。
でも、私の顔なら一周まわって手を出す気にならなかったりしないだろうか。そう考えて、そういえばあんまり動じて居なさそうな人もチラリと居たなと回想する。万が一の事も有り得るのかも。
『ありがとお兄さん。アンリさんもお兄さんも頑張ってね、お先に失礼します〜』
「お疲れ様、Aちゃん」
「言っとくけど、明日からは他の棟にも行ってもらうからな」
初日だから態と仕事を減らしてくれていたらしい。口は悪いけど私に滅法甘い従兄の気遣いにクスクス笑いながら部屋を出て、事前に説明されていた道を通って自分の部屋へと向かう。正月の集まりでお菓子をこっそりくれたりするのだ、あの人は。
『………あ、大分用意してくれてる』
カードキーを翳して開いた扉の先。想像以上に、私の好きな明るい色使いで窮屈さを微塵も感じさせない部屋の内装に言うまでもなく目を輝かせた。ベッドも大きいし、ふわふわだ。
『来てよかった〜』
女子が一度は憧れる可愛い部屋。テンションが上がるのも無理は無い、筈だ。
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作者名：信楽
| 作成日時：2022年12月25日 2時
