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『は〜い。じゃあ行ってらっしゃ〜い』
「アトラクションのお姉さん？」
二次選考3rdステージに向けて、三対三のマッチアップが完了した彼らにゼッケンを渡し、笑顔で手を振って見送る私に向かって、思わずと言った様に呟いたのは凪君であった。面白い例えをするものだ、中々気に入っちゃったな。
2ndステージでのチーム決めに中々苦戦しているのか、最初に彼らを見送り出してから何チームか送っているが、しかし本当にまちまちだ。いきなり初見の人達と顔を合わせてチームアップなんて、普通に考えれば難しい話であろう。
仕事が無いので、手持ち無沙汰に暇を持て余す様に部屋の中をウロウロと歩く。仕事で来ている訳だから、仕事をしていないと何だか落ち着かない。早く誰か来てくれないかな、と特に意味も無く両手の拳を真上へと突き上げた時であった。
「お、Aじゃん。それ何してんの？」
『千切君。國神君に御影君も、お疲れ様』
「逸らされたな」
「っす」
「何照れてんだよ國神ぃ」
「ちょ、やめろっ！」
何ともタイミングが悪い事だが、待ち望んだ登場に佇まいを直して笑顔で出迎える。何時も通りの無邪気な笑みを浮かべた千切君が國神君の脇腹を肘でつついて、顔が赤くなっている事を指摘しながら揶揄っている、その様子を微笑ましく思いながら見つめて。
『？ 御影君？』
「………」
『玲王く〜ん』
「……ぁ、え、何」
『ううん、安否確認。どこか痛めてるの？』
「ぃや、………え、今玲王っつった？」
『遅延してるの？』
まるで生気が抜けたかの様な、今にも消えてしまいそうな程意志薄弱とした様子の御影君がふと視界に入る。どうやら千切君と國神君と一緒にチームを組んでいる様だが、どうしてこんなに落ち込んだ様子なのだろうか。
具合でも悪いのかと思い、屈んで顔を覗き込んでみるもまるで反応は無く。ならばと思い、下の名前で呼んで手を振ってみて漸く、焦点の合わない瞳をゆるりと私に向けて、微かだけども反応を返してくれた。
しかし、あの御影君がこんなに鈍い反応だなんてやはり何かあったのだろう。何時もは近寄るだけで、顔を赤くして乙女の様な反応をしてくれていたのに。
「Aにも反応しねぇとか、余っ程凪に置いてかれたのがショックみたいだな」
『？ そうなんだ』
千切君の言葉に、先程見送り出した凪君の姿を思い出すが、特に何時もと変わりない様子でピースを私へと掲げていた姿しか思い出せずに、静かに首を傾げた。
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作者名：信楽
| 作成日時：2022年12月25日 2時
