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「あ！ マネージャーだ、おっはよ〜！」
「ぁ、まっマネージャー……おはよう、ございます」
『早いんだね。おはよう』
思わず足が伸びてしまったのは、昨日唯一全てを回れた五号棟で。やはり、誤差程度でしかないが慣れた所から始めたい気持ちがあったのだろう。
とはいえ、ある程度の支度は自分達で任せているので彼等の体力テストの後くらいしか今のところは仕事が無い。こういう時はどうするべきなのか、と立ち止まった私を不意に快活な声が呼んだ。
振り返った先。真っ先に私を見つけると無邪気に満面の笑みを浮かべて駆け寄ってきた彼の、蜂蜜の様に綺麗な瞳を見つめて挨拶すれば彼は嬉しそうに頬を染めて私に勢いのまま抱き着いて来た。
その様子に「お、おい蜂楽」と注意するのは昨日湿布を手渡した黒髪の男の子だ。目が合ったのでニコリと微笑めば、少し固まった後に彼は爆発したかの様に一気に顔を赤くする。効果音をつけるとしたら「ボフン」が一番適切だろうか。
『もう身体は大丈夫？』
「はっ、はい！ も、貰った湿布はお腹にきちんと貼って……」
『お腹を怪我していたの？ 気付かなくてごめんね……』
「そんな、いや全然！ 湿布がバッチリと効いてるし！」
『なら、良いけれど……』
良くはないのだが。身体を庇う素振りを見せていたから何処かを怪我しているとは勘づいていたが、まさかお腹だったとは。辛かっただろうに、気付かず過ぎてしまうとは申し訳ない事をした。
今日はそんな事を起こさない様に注意して見なきゃ、と喝を入れる。同じ失態は二度は繰り返さない。とはいえ、被害となってしまった彼に『ごめんね』と頭を下げれば慣れていないのか目の前の優しそうな彼は慌てふためき「大丈夫だから！」と手をオロオロとさせた。
私としては足りない程であったが、二人共に言われてしまって面を上げた丁度その時。
「あ？ お前ら何やって………って、マネージャー！」
「ぉ、」
『おはよう』
『怪我は大丈夫そうだね』という私の問いに、身を固くしてぎこちない動きながらも頷いたオレンジ髪君と、「まじか、ラッキー」と楽しげに目を細めて私に駆け寄る、昨日は話す事は出来なかったがそれとなく印象に残っていた綺麗な男の子。
朝から元気な様子を微笑ましく思い笑顔で眺める私に、その澄んだ勝ち気そうな桃色の瞳を向けて彼はふと思い出した様に問う。
「マネージャーの名前、聞いてなかったんだけど」
『……あ』
また忘れるところだった。
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作者名：信楽
| 作成日時：2022年12月25日 2時
