【ブルーロック】顔面国宝だからといって。 (ページ2)

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「あ、さっき見た可愛いマネージャーさんだ！」
「本物エグすぎね……？」
『どうも、顔面国宝です』

慣れた反応だが、同時に物珍しい反応だとも思った。生粋のサッカー少年達を集めた施設だから、さほど異性に対する欲とか無いのだろうか。それはそれで私としては嬉しい。

ここで私に何か評価が付けられる訳でも無いし。学校の時程周りに気を遣わなくても良いかと判断して、人生で一度はしてみたかった挨拶を繰り出せば彼等は「自分で言うか？」と言わんばかりの表情で固まる。自認してるので。

固まる彼等を他所にさっさと自分の仕事を済ませて休みたいという欲が働いて、やや早口で『怪我人の手当てです。怪我人は手ぇ上げて』と子供に呼びかけるように声を上げれば、瞬間「ハイッ!!!」と元気な声と共に勢い良く奥の方で手が上がったのが見えた。

「あ、あああの俺、五十嵐栗夢って言います！れ、連絡先交換しませんか!?」
『可愛い名前だね。君がスマホ返却してもらった時に考える。………はい、終わり』

因みに、「月野なら手当てとかも上手そうだよな〜。保健委員やっててほしい」という男子のご期待に沿って、中学三年間ずっと保健委員で無駄に手当てが手馴れてしまった私にかかれば、これくらいは造作ない。在り来りな台詞も、もう脳死で答えられる域にまで達した。

こんな床なのに裸足でサッカーをやるからこんな怪我をするんだと思ったが、これに限っては彼の責任では無いので特に何も言わないでおこう。お兄さんは何を考えているのか。

あっという間に終わった手当てに名残りおしそうな声を上げる坊主頭君に『お大事にね』と声をかければ、彼はパァと顔を輝かせた。そして、周りに向かって「天使だ！見ろ、俺に滅茶苦茶優しい！」と大声を張って自慢しだす。とんでもない子だなこの子。

『贔屓はしないようにしてるの。ごめんね』
「いい加減やめろ、マネージャーが困ってんだろ」
「あはは……」

当たり障りない様笑顔で眉を下げて謝れば、彼は食って下がろうとする。これは私の顔が罪すぎたかもしれない、と冗談で無く真剣に考える私の横までふと誰かが駆けつけたかと思えば、坊主頭君の首根っこを掴んで私から遠くへ引き離す。

そして、「すまん、彼奴が迷惑かけた」と素直に頭を下げてくるものだから、慌てて全力の身振り手振りを添えて『大丈夫、慣れてるから』とそれだけは伝える。今までの苦悩を考えれば、あれくらいは可愛い方だ。