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第一夜 ページ2

〜独歩side〜





いつもの様に、遅めの帰宅をする俺。





これが、俺の当たり前の毎日。





終電を、逃して歩いて帰るなんて当たり前になってきた。





コレも全部、あのハゲ上司のせいだ。





俺は、そんな愚痴を心の中で言いながら唯一安心できる我が家へと靴を脱いであがる。





今日は、姉さんは早めに帰れるとはメールを貰ったが帰っているのか?





そんな、少し不安な思いを馳せながらリビングの扉をガチャリと開ける。





すると、俺が開けた扉から微かに夜の匂いが舞い込んでくる。





何だ、と思いながら俺が目の前を見るとスーツ姿の俺の実の姉の姿。





独「姉さん?今、帰ったよ。どうしたの?窓なんか開けて」





俺が、近くのソファに上着と鞄を置き姉さんの元へと近付く。





貴「独歩……。ごめんね?」





独「何、謝ってんだよ姉さん。どうしたの?今日は、様子が変だぞ?」





俺は、姉さんの沈みきった暗い声に嫌な予感を持ちながら姉さんへと手を伸ばす。





貴「本当に、ごめんね……?でも、もう耐えられないの……ッ。お願い、独歩だけでも幸せになってね?」





姉さんの震えた声と、同時にふわりと白いカーテンが舞う。





姉さんが、俺に涙を溢しながら笑みをむけている。けれど、その細身の身体は宙へと放り出されていた。





独「なっ!!!姉さん!!」





咄嗟の事で、頭が回らない。落ちていく姉さんの身体へ、手を伸ばす。





後、もう少し姉さんの指先が俺の指先に触れようとした時には遅かった。





姉さんの身体は、下へ下へと落ちて行ったのだから。





グシャリ……。





やけに、耳に響く何かが潰れたような落ちたような音。





「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」





「おい!!人が、上から落ちてきたぞ!!」





「早く、誰か救急車を!!!」





下で、騒ぐ悲鳴と大きな声。





俺は、床にペタリと力が抜けて座り込む。





姉さん……、と呼んだ声は細くて。





先程まで、姉さんが居た場所には何も無い。





それで、思い知らされる。





姉さんは、飛び降りてしまったのだと……。





俺は、目から溢れて止まらない雫を拭えずただ叫ぶように泣いた。





俺が、助けられなかった温もり。





今じゃ、冷たい温もり。





俺が、助けられなかった大好きな姉さん……。

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アップルパイ - き、気になる (2020年6月27日 12時) (レス) id: 451b0d7f40 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:千本桜 | 作成日時:2019年2月18日 13時

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