【d!】貴方に憧れたから、ヒロインのような特別にはなりたくなかった season2【zm】【軍パロ】

89話 準備は整った ページ50

ゾム先輩に手をひかれてどんどん上に登っていく。

途中屋根を壊してたのはトントン書記長に後で報告をした方が良さそう。

流石にきつくなってきた。



｢気ぃ抜いたら落ちるで、手の力だけは緩めんなよ｣


そう言いながら手をぐっと握る先輩。




登りきる頃には空が赤みを帯びていた。旗に掴まりそこから見える景色を映す。


｢こう見ると、城下町って小さいんですね｣

｢せやな…大きく感じてたもんも、視点を変えれば小さかったりして見える時があんねん｣



どこか憂いを含んだ声音に思わずゾム先輩の顔を見てしまった。

普段見えないフードの中を夕日が照らしていて、スっと通った鼻筋がハッキリと見える。

旗に掴まる私の横へ来た先輩は私のことを慈愛に満ちた目で見ていた。



｢逆もまた然り。小さく思ってたもんはいつの間にかこんなにでっかく育ってた｣


頭を撫でる先輩の手つきは壊れ物を扱うかのような優しさ。

｢…なんで、そんなに泣きそうな顔してるんですか｣


眉を下げ、弱々しい表情を見せる先輩に問えば撫でる手を止めて言った。



｢…俺は、これまでAが無茶しようとしたら止めてきた。危険な目に合わせたなかってん。

けど最近気づいてもうた…お前は、俺が思ってるより何十倍も強くなってるって。

もちろん、上司としては嬉しいし喜ぶ。

…でもお前は、Aは俺にとってただの後輩ちゃうねん｣


…先輩は、これから私がやることに気がついてるんだ。…すごい。

完璧に隠してたつもりだったのに。





｢だから、Aが覚悟決めてるように俺も覚悟決めた。
お前が無茶して居なくなる前に今度は俺が守る。絶対に、どんな形であれ。

せやから、安心して思いっきり無茶せぇ！｣



屈託のない笑顔。その笑顔に何度励まされ何度悩まされただろう。きっと両手を使っても数え切れない。

私にこうしてたくさんのことを教えてくれたのは、目の前にいるこの人に間違いない。


｢…言いましたね？先輩の事ちゃんと信じてるんで今まで以上に無茶しますよ？｣

｢…口も達者になったわ。ほんま生意気……そこ含めての成長ってか？ヒヒッ｣



…先輩の期待に応えないとね。



準備は整った。

隙なんか絶対に作らない。

完璧な作戦。


君も覚悟しときなよ、レティ。




ピピッ、とインカムの音が鳴る。



｢ゾム、A。
さぁ、最終決戦といこうではないか｣





｢｢…ハイル･グルッペン｣｣









次回、最終章

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