82話 静かなこの場所で ページ42
食堂は前のような騒がしさが無くなった。
レティを囲んでいる風景は消え、本来あるべき姿に戻りつつあった。
相変わらず時間になってもなかなか来ないグルッペン様。トントン書記長は寝ていると伝えてある。
これを機にしっかり休んで欲しい。
コネシマ隊長とシャオロン隊長はレティの件についてグルッペン様からある指示を受けたとの事。
ゾム先輩は任務に出ているし今晩は帰ってこないだろう。いつもより静かな城内に少しだけ違和感を感じてしまう。
ロボロ監視官はずっと監視室に篭ってしまっている。行事やそれ以外の時はなかなか部屋の外に出ないとのこと。
そう考えるとこうして食事を一緒にする人は減ったと感じる。
「…静かですね、人が少し居ないだけでここまで変わるとは…」
「エーミールさん」
「Aさん、こうして話すのはお久しぶりですね。元気そうで何よりです」
ニッコリ笑うエーミールさんの顔にも疲れが見えた。
忙しくない時なんて一時も無い。その中で休みを取ることは難しい。それでも私達とて人間…
何とかならないものなのか。
「…じめってるめう…」
「…え、お通夜?」
入ってきたオスマン外交官とひとらん隊長が静かな食堂を見てそれぞれ呟いていた。
確かに、こんな雰囲気が何日も続いている。
こうして見てみると、私が聖女になってから可笑しくなったと思ってしまう。
レティが聖女のままの方が、みんな幸せだったかもしれないし。なんて
「…正直、Aとこうして話すの久しぶりやね」
「そう、ですね」
珍しく話しかけてきたオスマン外交官に思わず驚き言葉が詰まる。
そんな私を見てオスマン外交官は気まずそうに、悲しげに笑う。
「ごめんな」
「…謝らなくていいです。レティが大切にされてた事は事実ですから」
「…相変わらず、トゲのある言葉やね。出会った頃とまるで変わらへん」
……出会った頃。
「…覚えてらっしゃるのですか?」
「当たり前やん、今世紀最大の驚きやってんで?あのゾムが俺の部隊に入れるって聞かんかったんやから」
…これは、私の知らないゾム先輩の話だ。
「…私が城で務めるようになってから先輩が私を暗殺部隊に勧誘してたのでは…?」
「それがちゃうんよ、Aが入る前からずぅーっと言ってるめうよ。
いつかAが入ってくんねん!Aは俺の後輩にするからな!
ってね」
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ポンコツ - めっちゃ面白くてどんどん読めました!マジ神作! (2021年5月15日 8時) (レス) id: 325f452e67 (このIDを非表示/違反報告)
隻狼姫(プロフ) - えっ、おすすめに出てきたから見てみたら面白くて一気読みしてたんですけど、まさかお気に入り登録してるtwst小説の作者さんだったとは…そりゃ面白いわけですわ… (2020年10月7日 21時) (レス) id: efc986c11a (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 次回が最終回…だと…!?うああああ……待ちきれないぃぃい…。むっちゃ楽しみです!! (2020年9月26日 0時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
kiito - あぁー最終章に突入してしまった〜!嬉しいけど寂しい(´;ω;`) (2020年9月21日 22時) (レス) id: 840ffe907d (このIDを非表示/違反報告)
ぽんちゃ(プロフ) - レティまさか、、、味噌汁に*を、、!?だから夢主は*に関する本を教授のいる図書室から借りてキッチンで*を作ってから飲んで耐性を付けたんですか!!?(*←のところ合ってるか分かんない、、) (2020年9月16日 20時) (レス) id: c3d604437a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼岸桜+α | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年6月6日 9時