67話 進み出した一人 ページ26
「しゃ、シャオちゃん…何言って……」
「黙れや、はよ出てけ…顔も見た無いわ」
正直、驚いた。あんなにレティにベッタリだったシャオロン隊長がこんなに冷たくあしらうなんて。
「…レティは聖女なのにっ……シャオちゃんなんて知らないから!国が終わっちゃったらシャオちゃんのせいだからね!私を信じないから!後悔しても知らないからねっ!!」
ヒステリックに叫んだレティが雑にドアを開けて出ていった。うるさかった部屋も一瞬で冷める。
「…A」
「はい」
「ホンマ、すまんかったわ…ごめん…ごめんなさい……ちゃんと話聞くべきやった。レティが聖女だからって、仲間の話も聞かないで先走って……結果この有様や…」
ベット横の椅子に腰をかけ、憂いを帯びた表情で私を見ていた。
「…先程も言いましたが、皆さんは悪くないです。皆さんの信用を得られなかった私にも非はあります。…自分の間違いや失敗を自覚する事はそうできません…
改めて、皆さんが幹部に値する人達だなと思いました」
一見簡単そうに思えることでも、実際はできない事の方が多い事もある。行動を起こす事は難しい。
それすら当たり前にこなせるこの人達が、やはりこの国の創立者であり、主役なんだと思える。
ゾム先輩に憧れて、背中追いかけてやっと掴んだと思えば…目指す背中はまだまだ沢山いた。
過ごすうちに皆さんが好きになれた。皆さんが好きだから、この国を好きになれた。
守りたいと思えた。
いくら聖女だったとしても、皆さんがいなればこの国を守りたいなんて思うことは無かっただろう。
「…シャオロン隊長、ありがとうございます」
「なんでお礼なんか…」
「居場所を下さり、ありがとうございます…」
「…なんや、綺麗に笑うんやんけ…」
いつしかレティに向けられていた優しい笑みが、今は私に向けられている。
…どうしようもない優越感に、鳥肌が立ちそう。
ヒロイン達は、よくあんなに平気でいられるわ。まぁ、当たり前の笑顔だからかな。
「…A、ありがとうな」
「…いえ……」
「…んぅ…ぁれ……先ぱ…ぃ…?」
隣のベットから声が聞こえて、見ると薄ら目を開けたチーノがコチラを見ていた。
「…A先輩…よかった、戻って来たんで……」
そう言い、そのまま寝てしまったチーノを見て思わず笑い合った。
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ポンコツ - めっちゃ面白くてどんどん読めました!マジ神作! (2021年5月15日 8時) (レス) id: 325f452e67 (このIDを非表示/違反報告)
隻狼姫(プロフ) - えっ、おすすめに出てきたから見てみたら面白くて一気読みしてたんですけど、まさかお気に入り登録してるtwst小説の作者さんだったとは…そりゃ面白いわけですわ… (2020年10月7日 21時) (レス) id: efc986c11a (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 次回が最終回…だと…!?うああああ……待ちきれないぃぃい…。むっちゃ楽しみです!! (2020年9月26日 0時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
kiito - あぁー最終章に突入してしまった〜!嬉しいけど寂しい(´;ω;`) (2020年9月21日 22時) (レス) id: 840ffe907d (このIDを非表示/違反報告)
ぽんちゃ(プロフ) - レティまさか、、、味噌汁に*を、、!?だから夢主は*に関する本を教授のいる図書室から借りてキッチンで*を作ってから飲んで耐性を付けたんですか!!?(*←のところ合ってるか分かんない、、) (2020年9月16日 20時) (レス) id: c3d604437a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼岸桜+α | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年6月6日 9時