68話 憧れの姿のまま ページ27
その後、寝たら体力も回復しいつも通り過ごすことができるようになった。
…これも、初代様のお力なのかもしれない。
感謝してもしきれないな。
やはり、食堂に飾られている絵画の女性はあの聖女様だった。…不思議な感覚…
「明日か…」
明日でこの国の全てが決まる。そう思うとほんの少しだけ怖くなる。大丈夫だと分かっていても、心配症な面が出てしまう。
「なんや、こんなとこにおってんな」
「ゾム先輩、おはようございます」
珍しくドアから入ってきた先輩が私の横に並んで同じように絵を見ていた。
「…チーノもここ来とったわ」
「え?」
「…Aが死にそうになった時、俺が連れ戻しますってここに来て言うとった」
そう言った先輩の目はフードに隠されて見えなかった。おもむろに私の頭に手を伸ばし、いつもとは違う優しい撫で方をする。
その理由が分からないとは言わない。
「…改めてな、俺って不甲斐ない奴やなぁって思うねん。大変な時なのに大事なヤツやっぱり守れんし、後輩に助けられるし、俺だけなんもしてへんなぁって、思ってまう」
「…先輩」
…どうしよう、何も言えない。…チーノにしか出来ないなんて、先輩をまた傷つけるだけだし…だからといって……
難しい。他人の事を全部わかるわけじゃないから…
「先輩がそう思ってくれてた事は事実なんでしょう?大切に思って貰えることだけでも…私には幸せなんです」
ずっと、愛されなかったから。
こんなにも暖かい情を注いでくれるのはいつもゾム先輩だった。何度救われたか、先輩は知らないんだろうけど。
「…自分に出来ないことが多い事は分かってんねん。だから、俺がAにしてやれる事教えてくれや」
そう笑って見せた先輩に、ドクンと心臓が痛くなる。
「…先輩は、先輩のままでいてください…ずっと、私の憧れの姿でいて欲しいです」
ニカッと歯を見せた先輩が私の腰に手を回して思いっきり持ち上げる。
浮遊感に戸惑いつつ、自分より下にある先輩の顔と近いことに気が付き、無性に恥ずかしくなる。
「…先輩、下ろして下さい…」
「いやや、いつも通りの俺がええんやろ?Aが聖女やからって言うこと聞いてあげへんからな」
いたずらに笑う先輩。
少しズルくないですか?
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ポンコツ - めっちゃ面白くてどんどん読めました!マジ神作! (2021年5月15日 8時) (レス) id: 325f452e67 (このIDを非表示/違反報告)
隻狼姫(プロフ) - えっ、おすすめに出てきたから見てみたら面白くて一気読みしてたんですけど、まさかお気に入り登録してるtwst小説の作者さんだったとは…そりゃ面白いわけですわ… (2020年10月7日 21時) (レス) id: efc986c11a (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - 次回が最終回…だと…!?うああああ……待ちきれないぃぃい…。むっちゃ楽しみです!! (2020年9月26日 0時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
kiito - あぁー最終章に突入してしまった〜!嬉しいけど寂しい(´;ω;`) (2020年9月21日 22時) (レス) id: 840ffe907d (このIDを非表示/違反報告)
ぽんちゃ(プロフ) - レティまさか、、、味噌汁に*を、、!?だから夢主は*に関する本を教授のいる図書室から借りてキッチンで*を作ってから飲んで耐性を付けたんですか!!?(*←のところ合ってるか分かんない、、) (2020年9月16日 20時) (レス) id: c3d604437a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:彼岸桜+α | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2020年6月6日 9時