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ビール『国木田独歩』 ページ2

朝。起き抜け早々、俺に衝撃が走った。驚き過ぎて、声も出なかった程の衝撃だ。

「……んぅ……お早う、国木田……」
「……は?」

職場の同僚と、互いに全裸で寝台に寝ていたのだ。眼鏡を掛けることも忘れ……いや、認めたくなかったのかもしれん。意図的に掛けなかった事は認める。

だが、聞こえたのは紛れもない……異性の同僚であるAだった。

「な、な、何故お前が……しかも互いに全裸なんだ……?」
「あぁ、やっぱ覚えてないかぁ……お察しの通り、お楽しみした翌朝だよ」

その言葉に耳を再度疑った。嘘だと言って欲しかった。部屋を見回せば、床に転がるビイル缶。待て、俺はこんなにも散らかした覚えは無い。

昨夜の記憶を引っ張り出す。
確か、太宰とAから居酒屋へ、無理やり呑みに連れていかれた。
ビイルを飲み干し、此奴が巫山戯てジョッキ二杯を一気飲み。挙句の果てに俺にまで強要。挑発した太宰の言葉に食って掛かり、俺は誘いに乗った。

そこから先の記憶が無い。如何云う経緯があった?

「……悪いが記憶に無い。巫山戯るのも大概にしろ」
「阿呆。そんなに疑うんなら塵箱を見なよ。あんた、そういう所確りしてたから」

その言葉を聞いた瞬間、俺は祈る様な心持ちで塵箱を見た。

そんな俺の心を知ってか知らずか、塵箱の中身は明らかに此奴との行為があった事を物語った。昨夜の俺は何れ丈、Aを求めたのかも……引いてしまう程に表されている。

「お……俺の手帖にはこの様な出来事は書いてないぞ……」
「でも有りました。事実を認めなよ」

対するAは手馴れた様子で服を着る。事実は認め難いが、此処で帰らせるのは……其れこそ俺の理想に反する。というより、男としても名が廃る。

「A。斯う成ったのは受け入れる。だが、俺は生涯に愛した女を抱くと手帖にある」
「は?」
「籍を入れるぞ」
「重っ!?」

俺は至極真面目に告げた心算だったのだが、返ってきた言葉は俺の言葉を蹴散らした。
奴は目を見開き表情を引き攣らせる。俺からしたら、此れは決まり切った事だ。自身の身支度を整えながら話を進める。

「先ずは役所だ。経緯は最悪と言えるが、探偵社の面々にも説明をし」
「そうじゃないでしょ!?一夜の過ちで結婚!?莫迦なの!?」

身支度を既に整えたAが俺に当たり散らす。全く、人の理想を引っ掻き回した上でこの態度か。

「幸せにはしてやる。但し、俺の理想の上でな」
「断る!!私はまだ独り身を謳歌したいの!」

※→←ブランデー『太宰治』



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いちご(プロフ) - ミラから来たぞおおおぉ! に、しても評価凄いですね!Σ(゚ロ゚;) (2020年6月21日 14時) (レス) id: 3cbabf2902 (このIDを非表示/違反報告)
モフ子 - 道化さん» 全然OKです。後見させてもらいました、兎に角好き(語彙力Maxです。 (2019年8月4日 17時) (レス) id: 7dc88695a1 (このIDを非表示/違反報告)
道化(プロフ) - 書かせて頂きました!お仕事疲れとの事なので、ちょっと絡めたお話を。ゴーゴリ「頑張った子には、ご褒美がいるよね!私は分かっているのさ!」 (2019年8月2日 18時) (レス) id: 915e79c273 (このIDを非表示/違反報告)
道化(プロフ) - モフ子さん» 了解しました!リクエスト内容は、シリーズ最新作の「恋は下心」の方に投稿させて頂きますが、大丈夫でしょうか? (2019年8月2日 18時) (レス) id: 915e79c273 (このIDを非表示/違反報告)
モフ子 - リクエストしても宜しいでしょうか?天人五衰のゴーゴリ君っていいですか?シチュエーションは何でも構わないのでお願いします!仕事帰りに癒されたい!どうか私の我儘を聞いて下され (2019年8月2日 11時) (レス) id: 7dc88695a1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:jazz | 作成日時:2019年4月26日 19時

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