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土方さんの部屋は、既に妖刀の呪いが侵食しているようだった。
大量に置いてある漫画、アニメのビデオ、女性キャラのフィギュア。
こうなってくると、土方さんの心を支配するのも、時間の問題だ。
『どうしよう……』
「おい何してんでィ」
『うおわぁぁぁ!!総悟隊長!?』
「副長の部屋を覗くたァ、見かけによらず随分大胆なことするねェ」
ニヤニヤと笑う総悟隊長に慌てて誤解を解こうとするが、こういう態度は、このサド隊長を増長させるには十分すぎるものだった。
「随分慌てるじゃねーか。ふーん、やっぱそういうことなのか」
『だーかーら違うんですって!』
「じゃ何でィ?」
『そ、それは、妖刀が』
と、言おうとしたところで、副長が勢いよく部屋に飛び込んできた。前述した部屋でテレビをつけ、アニメを見る副長は、まさしく妖刀の呪いそのものだ。
そして、こんなものを見てしまった総悟隊長が、ただで済むはずがない。
副長が振り向いた時、そこにはニヤけ顔で副長を見る隊長と、隊長にドン引きした私がいた。
「だはははは!!」
「だから言うのヤだったんだよ。信じてねーだろお前。信じるわきゃねーよなお前」
あの後、私たちはファミレスに場所を移し、妖刀を手にしてからのこれまでの出来事を聞いた。
当然ながら、隊長は信じていないようだったが、まぁ無理もない。
『呪いが進行してますね。早急に手放した方がいいですよ』
「それが出来りゃ苦労しねぇ。気づけば厠や風呂まで持っていっちまう始末だ。剥がそうにも剥がれねぇ」
土方さんは大きくため息をつくと、吸っていたタバコの火をもみ消し、立ち上がる。
「こんなもんのせいで今の俺ァすっかり隊士から冷たい目を浴びせられている、それに加えて伊東の工作だ。いつ切腹の申し渡しが来てもおかしくねェ」
『この前の事件、随分と尾ひれがついて広まってましたね。私を盾にして逃げようとしたとかなんとか』
「あぁ、そういうこった。……お前らも俺なんかといると伊東に目をつけられちまうぞ。じゃあな」
そう言って1人寂しく土方さんは立ち去る。
その背中を、なんとあの総悟隊長が追いかけていた。
「待ってくだせぇ、土方さん!」
隊長の声に土方さんが振り向く。
しかし、元来土方さんの弱みを狙っていた総悟隊長が、こんな所で優しくなるわけもない。
「焼きそばパン買ってこいよ。あとジャンプもな、もちろんテメーの金で」
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作者名:おさくら | 作成日時:2020年5月7日 0時