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「伊東鴨太郎くんの帰陣を祝して、カンパーイ!」
「「『カンパーイ!』」」
近藤さんの乾杯の音頭と共に、皆久しぶりの酒宴に盛り上がる。
私はジュース片手に、伊東先生の隣に座った。
『伊東先生、外回りの話聞かせてくださいよー』
「またかい?全く、外回りは遊びじゃないんだよA君。いつお上に消されてもおかしくない僕たちが、自由に動くことが出来るよう、僕があれやこれやと手を回しているんだから」
『えへへ。だって伊東先生の話、なんかすごいんですもん。学のない私には、違う世界の話を聞いてるみたいで楽しいんです!』
「お、話がわかるじゃないかA!いやはや、頭の固い幕府共と渡り合うことが出来るのは、伊東先生の他におられまい」
近藤さんと伊東先生について盛り上がっていると、先生は、おもむろに1つ咳払いをした。
「近藤さん、今の幕府が上にいては、いずれこの国は滅ぶだろう。我々はこんなところでいつまでも、くすぶっているわけにはいかないのだ」
酒が入ったことで、伊東先生恒例のご高説が始まる。
外回りの話は楽しいが、こればかりは耳にタコが出来るほど聞いたので、こっそり元の席に戻り、酒宴で出された食事に舌鼓を打つ。
「おーいAー、酒持ってきてくれー」
『うっわ総悟隊長酒くさっ!まだ飲むんですかー?』
「おー、そこのでっけー酒瓶だ。早くしろよコノヤロー」
酔って顔を真っ赤にした総悟隊長が、早く酒を持ってこい急かす。
はぁ、とため息をつき、隅に置いてあった酒瓶を総悟隊長に渡す。
「お、Aさーん。こっちにも酒!ついでに酌してくれよー」
『はぁ?もう、みんな酔ってますねー。酒は持っていきますから酌は自分でしてください』
「んだよ女のくせによー」
『あ、女性差別ー』
既に宴は盛り上がりを極めており、その後も私は、酒出しや酔った隊士たちの無茶ぶり等に追われていた。
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作者名:おさくら | 作成日時:2020年5月7日 0時