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終わった。
蔵場たち闇商人はまとめてしょっぴかれ、明日でも新聞が1面記事にするだろう。
駆けつけてくれた、というよりパトカーを取り戻しに来た同心の人たちに後のことを任せ、私たちは病院に戻った。
ミツバさんの最期には、総悟隊長が立ち会うことになった。
ガラス越しに二人の会話は聞こえなかったが、総悟隊長がミツバさんを手を取り泣き崩れたのを皮切りに、隊士達がみな、ミツバさんを死を悟った。
『ッ……グスッ……ズズ』
私のすすり泣く声に、近藤さんは黙って私の頭を撫でた。じんわりとひろがる近藤さんの手の温かさに、また涙が溢れる。
虚無感だけが、病院と私達を包んだ。
『総悟隊長!仕事してください仕事!』
「ゲッ」
あれから1週間の日が流れた。
葬式は真選組内で小さく執り行われ、虚無感に覆われていた隊内も、その後の闇商人騒動の後処理に追われに追われ、忙殺されたことで、徐々に明るさを取り戻していった。
もっと塞ぎ込むものだと思っていた総悟隊長も、ミツバさんとの最期の時をちゃんと過ごせたからなのか、いつも通りのサボりドS王子に戻りつつある。
『同心のパトカー借りパクして道交法ガン無視の頭文字D走行。これらが全部始末書だけで済んでるの、ほんっとありがたいことなんですからね!』
「なにさらっと全部俺のせいみたいにしてんの。少なくともパトカー借りパクしたのはテメェだろぃ」
『まーったく総悟隊長は!すーぐこうやって問題起こすんですから困ったもんですよ!』
「おい、聞こえてんだろ。シカトすんじゃねぇよ」
『だってここに書いてますもん。総悟隊長が諸々の責任者だから始末書書けって』
「誰が書いたんでぃ。こんなデタラメ」
『副長です』
「そーかそーか。じゃ俺は1つ仕事が出来たんでこれで」
『あっ、ちょっと!!』
問答無用で土方さんに切りかかろうとする総悟隊長を止めようとしたその時。
刀の違和感がまた蘇ってきた。
『また……変に重くなってる』
生物のような生々しい重さを感じる刀に、思わず鳥肌が立つ。
そういやコイツ、実家から持ってきた刀なんだよなぁ……。
『そろそろ実家に帰れってことなのかな……ってこんなことしてる場合じゃなかった!』
白昼堂々斬り合いを始めた総悟隊長と土方さんを止めるため、私は刀を腰に戻して2人の元へ走った。
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作者名:おさくら | 作成日時:2020年5月7日 0時