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あー酷い目にあった。
危うく意識が飛んでしまいそうだったが、なんとか持ちこたえてその後の江戸案内も頑張った。頑張ったよ私。
ていうかあの後パスタ全部ミツバさんが食べたし、何?度胸試しかなんかだったのあれ。
「総ちゃん。今日はいろいろありがとう。Aさんもありがとうね」
『屯所には泊まっていかないんです?』
「えぇ。向こうでいろいろとやることがあるの。落ち着いたらまた来るわ。今度は女の子同士のお喋りもしたいわね」
優しい笑顔でこちらを向くミツバさん。
うーんやっぱりいい人だなぁ……。綺麗だし……。
「それじゃ姉上、僕はこれで」
「あっ、総ちゃん!……あの人は」
「ヤローとは会わせませんよ」
総悟隊長の目付きが変わる。
「今朝方も何も言わず仕事に行きやがった、薄情な野郎でぃ」
それだけ言うと、総悟隊長は黙って歩き出してしまった。
『隊長?』
「仕事か……相変わらずね、あの人は」
『あ、あの……』
「ごめんなさいね、今日1日振り回してしまって。総ちゃんの部下ともなると、毎日大変でしょう?」
ミツバさんは困ったような、哀しそうな顔でそう言った。
「私が寂しい思いをさせまいと甘やかしたばっかりに、あんなわがままに育っちゃって……今日だって仕事が忙しかったはずなのに、本当にごめんなさいね」
ミツバさんの言葉に少しだけ答えを迷ってから、私は言葉を切り出す。
『もう慣れっこですよ、あの人のおーぼーっぷりは』
「え?」
『いっつも仕事は私任せだし、かと思ったら急に仕事ほっぽり出して付き合えとか言ってくるし、ドSだし、馬鹿だし、振り回される側は困ったもんです』
でも。
『でも残念ながら、上司が上司なら部下も部下なんですよね。あの人といると、刺激が多くて楽しいですよ、心臓に悪い刺激ばっかですけど』
ミツバさんは私の言葉にぽかんとしていたが、しばらくするとクスクスと笑いだした。
「貴方が総ちゃんの部下でよかったわ。貴方なら私がいない後も、きっとなんとかなりそうね」
『うーん……それはちょっと不安だな……』
そんな話で盛り上がっていると、どこかからやってきた1台のパトカーが、私たちの前で止まった。中からは土方さんと、アフロに変わり果てた山崎がいた。
「テメェら、こんなとこでなにして……!」
「! 十四郎さ…………ゲホッ!ゲホゲホ!」
十四郎さん、と言おうとして、ミツバさんの意識はそこで途切れた。
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作者名:おさくら | 作成日時:2020年5月7日 0時