闇の中の白【五条悟】

29.上 ページ30

この人……京都の学長さんじゃなかったっけ？



前、交流試合とかで来ていた気がする。


私は1年だから参加しなかったけど、
来年から参加するから見とけって


強制的に観戦させられたのだ。



ゴホン。




目の前の人の咳払いで現実に意識を引き戻す



｢急にすまんの。杏子A。忙しい為、端的に話させてもらう。｣


｢はい｣



｢私たちは、先の夏油傑が呪詛師になった件で、
東京高専の教育実態に疑念を持っておる。

そこで、杏子A。

お主のような宝を腐らせないために、
京都校に転校させることを上に提案した。

じきに、話はまとまるだろうから
荷物をまとめておくように。

……話は以上だ。｣




……はい？




｢なんですか、それ｣



｢異論も反論も認めん。
話は終わったと言ったはずだ｣



鋭い瞳がじっと私を睨みつけてくる。



でも、私も負けじと睨み返した。



硝子先輩も七海先輩も、

五条先輩も……夜蛾先生も、


大切な人たちが側に居ない生活なんて、
考えられないから。



｢私は、京都校には行きません｣


｢お主に決定権は無いわ｣


｢私は人で、ものではありません。
意思だってあります！｣



とにかく、私は京都校には行きません！



そう大声で叫んで机を叩けば




｢はははっ、やるねえA｣



どこからともなく聞こえてくる

場にそぐわない陽気な笑い声



ポンッと肩に手を置かれ
そちらを見れば



｢なーに勝手にうちの後輩引き抜こうとしちゃってんの？おじーちゃん｣



ヘラヘラ笑ってる五条先輩。


えっ…サラッと偉い人のことオジーちゃん呼ばわりしてるけど、大丈夫なんですかね。



｢五条悟。お主は呼んでいないはずだが｣


｢うん。呼ばれてないけど、伝言を貰ってて、それを伝えに来たところ。｣


｢伝言だと？｣


｢杏子Aは東京高専でこのまま育てるって。上からの伝言。じゃ、俺はちゃんと伝えたからね｣



バーイ


そういうや否や
私の手を引いてズカズカと部屋を出る先輩に



引きずられる私。



｢京都に行けっていわれたんですけど、｣


｢だから、移らなくていいって｣


｢脅したんですか？｣


｢ううん、縛りをしてきただけ｣


｢縛り？｣



偉い人たちが納得するようなレベルの、ってこと？



｢私を京都校に行かせないためにですか？｣


｢もちのろん。僕の玩具兼抱き枕だからね｣



…………僕？

30.縛り→←28.偉い人

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す