闇の中の白【五条悟】

26.ぬくもり ページ27

頭を撫でられて

ゆっくりと意識が浮上する




｢いい子にしてな｣




離れていく温もりを

手離したくないと


何かを握り締めたその瞬間。



気の抜けた小さな笑い声がして



｢すぐ戻る｣



やんわりとその手が解(ほど)かれる



しばらくして
しっかりと意識が覚醒した頃



匂いとベッドの感触が
いつものと違うことに気づいて飛び起きた



｢うわ……｣



壁に貼られてる
グラビアアイドルの写真


立ち上がって部屋の中を見回せば


机の上、

伏せられている写真立てに目に留まる




そっと手に取ってみればそれは、


五条先輩、夏油先輩、硝子先輩

3人がピースをして笑っている写真。



凄く幸せそうな写真なのに…

今見ると、心が張り裂けそうになる。



だから、先輩も写真を伏せたのだろう。





……この部屋は、五条先輩の部屋だ。




意外と物がなくて、スッキリしてるなーなんて。



よくよく考えれば
人の部屋を勝手に見るなんて失礼だし



誰か来たら言い訳思いつかないし、



部屋から出ようと思った、その時、



｢はぁ｣



扉の向こう、すなわち廊下から聞こえてきた低い溜息の声に体が固まる



そう言えば、ここ男子寮。




私、五条先輩の部屋から出てきたら
色々と勘違いされそう…



ドアノブにかけていた手を離して
もう一度さっきまで眠っていたベッドに戻る




……まだ、暖かい。





そう言えば、眠る前




Aのせいじゃないよ、と言った先輩は

何も言わずに私を抱きしめた。



その時、本当に小さな声で
先輩は呟いた




｢俺のせい｣だと。



否定したかったのに


緊張したり安心したり
感情の浮き沈みが激しくて疲れてた私は、



そのまま何も言えずに
意識を飛ばしてしまったのだ。



もし、五条先輩が夏油先輩のように

1人で抱え込んで疲れて、



呪詛師になったとしたら＿＿＿



そう考えると、怖くてたまらない。



やっぱり私も、五条先輩のために何かしなくちゃ。


よし、夏油先輩を探しに……




ガチャッ




扉を引いた瞬間。




足を踏み出そうとして、

目の前の影に足を止める




……げ。



生唾を飲み込んで

死ぬほど長い時間(体感)をかけて
ゆっくり顔を上げれば



そこに居たのは、

真顔で少しだけ目を見開いて私を見下ろす七海先輩。



｢…五条さんいますか｣


｢いません｣


｢勘違いされないうちに部屋に戻った方がいいですよ｣


｢はい｣



出くわしたのが七海先輩で良かった(？)

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