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「...わ、すごい」
「でしょ?俺のお気に入りのレストランなの」
中に入って早々に小さく感嘆の声を上げるAにうらたはにっこりと笑った。
高層ビルの上階にあるレストランに彼が連れてきたかったのは、人の少なさ故だった。
慣れた手つきで店員に案内され、うらたについていくだけのAはやっと腰を下ろすと小さく息を吐いた。
「何頼む?今日は俺が奢るからいいよ」
あまり物静かなレストランに行く機会のないAにとっては少し緊張するようで、そんな彼女の様子を見て彼は助け舟をだすように優しく話しかける。
奢る、という言葉に過剰に反応したAは顔を上げると少し大きな声で遠慮する言葉を述べた。
「っえ、いや、いいって...!流石にそれは、」
「こういうのは男が奢るもんでしょ」
「いや、その申し訳ないし...うらたにばっかり負担がいくのはちょっと、」
「あれ、もしかしてお前高校の時の気にしてる?」
実はうらたがAに奢るのは珍しい話ではなかった。
高校生の時に遊びに行っては結構うらたに言い負かされて奢られてばかりだったのを覚えていたAは、大人になってまでそれは困ると眉を下げて困ったような顔をした。
うらたにとってはそんな大金でもなかったし、今でこそ捨てたとはいえ彼は大企業の息子だ。
彼から言えば金なんて捨てるほどある、という言葉がピッタリだろう。
「...気にしなくていいのに」
「いや、その...そうじゃないんだけど」
「じゃあ、」
一つだけ質問に答えてくれたら、割り勘にしよう。それでいい?
いつまでも引く気のないAにうらたは妥協点だとでも言いたげな顔をして、人差し指を立てて聞いた。
ここまでは計画通り。
彼女が引かないのなんて分かりきっていて、Aの首筋なあるキスマークについても聞かなければならない。
そんなの、利用するしかないじゃないか。
うらたの考えも知らずわかった、と頷くAにうらたは自然と口角が上がるのを感じた。
「...じゃあさ、そこの首にあるキスマ、いつ誰にどこでつけられたの?」
ニヤニヤと不敵に笑ううらたが、Aの目には悪魔のように映った。
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ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2022年7月10日 22時) (レス) @page18 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
ウル(プロフ) - めっちゃ面白かったです!応援しています!更新して下さるのを待ってます‼︎ (2021年11月17日 16時) (レス) @page18 id: 1d0d36f0fe (このIDを非表示/違反報告)
ぴっぴ - もう更新はされないのでしょうか...? (2021年10月16日 2時) (レス) id: 359457b5e0 (このIDを非表示/違反報告)
Haoto-ハオト(プロフ) - めっちゃ面白いです!!更新頑張ってください!!待ってます!! (2021年6月8日 5時) (レス) id: 17268be681 (このIDを非表示/違反報告)
リア - ファッ…凄い!凄く面白いです!こんなに夢中になった夢小説久しぶりかも…!自分のペースで頑張ってくださいね。応援してます! (2021年4月5日 22時) (レス) id: bba845c06e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かしや | 作成日時:2021年1月31日 17時