・ ページ36
「ほら早く行くよ」
「もうちょっとだけ〜」
「あーもう、！なに人混み程度で騒いでんの、メインはもうちょっとあっちなんですけど！？」
Aの声を呑気に聞き流してそんなことを言ったセンラはうらたと志麻と共に人混みから垣間見える普段と見慣れない景色に目を奪われていた。
ため息をついてAは立ち止まると、うらたの首根っこを掴みあのねえ、と言葉を続けた。
「終わったあとでもこの辺散策すればいいんだからついてきて、迷子になられちゃ困るんだって」
「別にいいだろ、連絡先...あ、」
「そういう問題じゃない」
そう言えば連絡先貰ってない、とスマホを取り出そうとするうらたの腕をそっと振り払ってAは頭を抱えた。
この様子でこれから数時間持つのか些か心配だが、Aにとっては嬉しくもある。
そもそも彼らにこれを見せるために来たの同然だからだ。
「ほら困っとるやん。お前らもはよ行こ」
Aが今日1番聞くことの少なかった声。
声のした方を見れば坂田が少し呆れたような様子で苦笑いをしていた。
彼の様子にびっくりしたうらたと志麻とセンラは目を見合せたあと、しゃあないなぁとどこから目線だとツッコミたくなる言葉を吐いて坂田に近寄ったAを追った。
「ありがと、」
「...別に。」
「坂田くんは行ったことあるの？慣れてそうだけど」
「...まぁ。俺の家はあいつらに比べて緩かったしな」
言うても最後に行ったのは小学校の低学年の頃やけど。
そうぶっきらぼうに言う坂田を気にもせず、Aはうらたやセンラ、志麻の時と変わらぬ笑顔を浮かべて返事をした。
「そっか、じゃあ坂田くんも久しぶりなんだ」
「...まあな」
Aの笑顔を見てられなくなって坂田は無愛想に顔を逸らす。
ちょっとだけ、眩しかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 416人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かしや(プロフ) - 雨の夜さん» ありがとうございます〜！内容に重きを置いているのでそう言っていただけると嬉しいです！更新がんばります！ (2021年1月31日 17時) (
レス) id: a864d91887 (このIDを非表示/違反報告)
雨の夜 - コメント失礼します！いやぁ〜前から見てたけど話の内容面白いのですごく好きです！作者さんのぺースで更新頑張ってください！ (2021年1月31日 10時) (レス) id: 1e59db50fb (このIDを非表示/違反報告)
かしや(プロフ) - のん！さん» ありがとうございますー！！更新頑張ります！ (2021年1月29日 20時) (レス) id: a864d91887 (このIDを非表示/違反報告)
のん！ - 初コメ失礼します！とっても面白いです！更新楽しみしています！頑張ってください (2021年1月26日 8時) (レス) id: 8e054f2938 (このIDを非表示/違反報告)
かしや(プロフ) - るいやで。いぇあ。さん» ありがとうございます〜！！！更新頑張ります！ (2021年1月23日 0時) (レス) id: a864d91887 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かしや | 作成日時：2021年1月20日 20時
