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少し昔の話をしようかな。
それはまだ私が社会人として働き初めて、一年もしない夏のことだった。
その日は散々で、上司からはありもしない失敗の責任を押し付けられて精神的にも肉体的にも参っているときだった。
そんな私の前にあなたが現れたのは。
「おねーさん…」
家に帰る途中の路地裏で誰かに呼び止められる声がした。
最初はそう、きっと気のせいだと思って聞き逃していた。
でも気のせいだとしても、余りにおかしい。
なぜならこんな時間に人がいるのは、いくら東京の町外れといっても可笑しいからだ。
何しろここは時代に置いてかれたかのように寂れていて、ましてやこんな時間など…。
そう考えると急に恐ろしくなって、少し早足になる。
「…ねぇって…」
やはり人がいたのか、もう一度呼び止める声が聞こえた。
「…聞こえてんでしょ、おねーさんに言ってるの」
途端に路地裏から人の姿が現れた。
「よかったらさ、おねーさん俺を拾ってくれない?」
生憎家を追い出されちゃってさ…そう言って笑う彼の姿は、何処か不気味でまた何処か美しかった。
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作者名:無名という名の無名さん。 | 作成日時:2018年1月13日 23時