tender rain 数原龍友 (ページ31)

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夜、駅近くにあるカフェに入ると龍友が笑顔で手を振っていた。

「すみません、お待たせしました」

「いいえ。僕こそ急に呼んじゃってごめんなさい」

何かあったのかと思ったが、その表情はどこか嬉々としている。

電話の時に聞いた声も比較的明るく感じたので、きっとこれから聞く話は良い話なのだろう。

「さっそく、何があったのか聞いてもいいですか？」

そう聞けば、龍友は笑顔で頷く。

「今日、友達に手を合わせに行きました。１０年ぶりでした」

「前に話されていたお友達ですか？」

「はい」

龍友は一度目を伏せて、テーブルの上で手をきつく結ぶ。

「思い出して辛くなるかもって身構えてたんですけど、全然そんなことなかったんです。

むしろ、またちゃんと手を合わせてあげられて逆に僕が嬉しくなりました」

「…それは、本当に良かったですね」

「Aさんのおかげです」

「いえ、私は何も…」

「その友達のお母さんに、ありがとうって言えってもらえました。

忘れなくてよかったって、今なら本当に思える」

そう話す目の前の人は、見たことないくらい優しい顔をしていた。

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