七話目 六年生のお世話係二 ページ9
伊>…お〜い、誰か近くにいませんかー…。
一方、華音の言う通り落とし穴に落ちていた伊作はかれこれ叫びつづけてどれくらいたったのだろう。
いつもの不運で穴に落ちたけれど、このまま助けが来なかったら…そう思うとやはり不運だ…と独り言が漏れてしまう。
そう思っていた伊作がため息をついた途端、上から縄が落ちてきた。
華音>やっぱり、ここにいたわ。
伊>…!華音!
華音>留三郎、伊作いたわよ。
留>伊作!全くお前はまた…!
伊>あはは…すまない、二人とも…。
縄を使って上げれば、伊作はやっと出れた事の安心と喜びで笑ってみせた。
でも、肝心の留三郎はやはりため息。
この二人のこのやり取りはいつもの事。
安定しているといえば正しいのか。
華音>伊作、よかったわ。
留三郎も、見つかってよかったわね。
留>ああ、礼を言う華音。
伊>ありがとう華音、君が見つけてくれなかったらもう暫く穴の中で過ごす所だったよ。
華音>ふふ、それもそれで見たかったわ。
伊>ええ…。
華音>冗談よ、それより伊作。
カゴを置いて、自身の手ぬぐいを取ると、伊作の顔をについていた土を拭った。
あちこち泥だらけだからせめて顔だけは。
華音>ちゃんと泥を払ってから部屋に上がってちょうだい?さっき掃除したばかりだから。
伊>あ…うん。気をつけるよ。
華音>それじゃあ、私はお先に。
そう言って去っていく彼女の後ろ姿を、二人は黙って見送っていた。その理由もそう、肝心の伊作がその場で固まってしまっているからだった。
留>…あれはただの世話焼きなだけか、意識してなのかわからんなあ。
伊>と、留三郎!何言ってるの!
彼女は誠意でああしたと…。
留>だが伊作は意識したんだろ?
伊>…そりゃあ、あんな美人な人にこんなことして貰ったら嬉しくなるだろう?
留>お前、面食いなんだな。
伊>うーん、僕は健康的で骨太な人がいいかなあ。
留>…本当、どこまでも保健委員だな。
蓮花>姉さんいますか?
華音>…そろそろ来る頃だと思っていたわ、入りなさい。
華音の部屋に訪れた二人は部屋に入るなり、すぐに襖を閉めた。
昼間なのに、しんと張りつめた空気を放つこの空間をもし低学年の子がみたら震えるだろう。
いつもの彼女達の空気とは違う、こうして集まるのは稀でもないしよくある事。
でも、今日は違った。
華音>…決行は明日の夜、まずは誰でもいいわ。
一人、殺しなさい。
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作者名:霜月 | 作成日時:2020年3月6日 0時