三十七話目 小平太の決めた事 ページ40
小＞これ、お前が握ったのか？
小平太が汚れてしまったおにぎりを見て言った。
もう既に泥や土で汚れて崩れているものはおにぎりと呼べるのかも分からない。
地面に落ちたそれは、まさに今の雪と同じ。
汚れていて、沢山の人に向けられる眼は恨みと怒り。
そんな事になったおにぎりを、誰も拾う人は…。
留＞小平太！？
雪＞…え…？
小平太が土を払ってそのおにぎりを食べ始めた。
彼が噛むことでじゃり、という音もする。
お腹を壊してしまう、体に良くない。止めようとしたけど、その前に彼は食べ終わって、雪の前で手を合わせた。
小＞美味かったぞ！
笑うその顔、何でそんな顔をしてくれるのだろう。
留三郎一瞬だけ唖然としてたけど、同じく地面に落ちていたもう一つに手を伸ばし…同じように食べ始めた。
雪＞な、何故…。
留＞あいつらもったいねーな。
こんなにも美味い握り飯を食べないなんてな。
小＞いいじゃないか！お陰で私達が食べれたのだからな！
雪＞すぐに吐き出さないと…！お腹壊しますよ…！
小＞お前の作った物だから、腹を壊す事はない！
雪＞…何で…。
そんな疑問をしつつも、小平太の事だから細かい事は気にするなと言われると思った。
なのに、そのすぐ後にその言葉は来なくて、沈黙の後に彼の口は開かれた。
小＞…雪は雪で、華音は華音だ。
あいつが伊作にした事は、許される事じゃないけれど、私は…あいつの事を知りたいのだ。
あいつは、今何を考えているのか。
本心を知りたい。
それを知った上で華音や蓮花にもう一度お世話係として戻って来て貰うのだ！
予想もしていなかった、そんな事が許されるはずがない。姉も蓮花も彼らの心と身体を傷つけた。
忍術学園に怒りを与え、それを今も尚笑っている。
本来なら、そんな事を許す者がいるはずがないのに。
何故、そんな前向きな事を言えるのか。
留＞…小平太。それはここにいる他の奴らが認めないぞ。
一体、どうする気なんだ。
小＞…そうだな、だから今決めた事がある！！
ニカッと笑ったその顔で、小平太の言った事は嘘のような信じられない言葉だった。
相手は暗殺集団で、それもプロ。
相手にする事は、もはや命を落とすことと変わりはない、小平太の考えはそれと同等の事だった。
小＞私は、華音達の所に行く！！
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作者名：霜月 | 作成日時：2020年3月6日 0時
