三十三話目 裏切りの制裁 ページ36
留>…おい華音。
お前が伊作に怪我を負わせたのは本当か。
華音>…その言い方だと…彼、助かったのね。
急所はついたのに、自分で処置したのかしら?
保健委員って、しぶといのね。
文>裏々山で亡くなった生徒は、お前がやったのか。
華音>……さあ、そんな人……いたかしら。
否定すれば変わったのかもしれない、なのに彼女の口から出たのは六年生の怒りを買うだけの言葉と態度。
彼らにだって、彼女と過ごした時間がある。
だからこそ五年生達がしたように、雪がそこにいるように、この状況も変わったのかもしれないのに。
彼女には、その意思が全く見えなかった。
田>蓮花!何故……何故滝夜叉丸を…!
蓮花>…。
華音>雪、さあ…こちらに来なさい。
華音の声が低くなった時、雪は俯いたまま静かに立ち上がった。五人の間をすり抜けていこうとすれば、三郎が手を掴んだ。
まさか、三郎が止めに入ると思わなかったけれども、雪は俯いたまま一回止まって、彼の手をすり抜けた。
竹>三郎…!
三>…。
部屋から出て、地面に足をつける。
両手には苦無、後ろには忍術学園の人達。前には月華。
両方に挟まれ、今彼女は中心に立たされている。
華音>…雪、私は彼らを殺しなさいと言ったけど…。
蓮花>…。
華音>…蓮花。
蓮花>……。
二人が後ろにいた生徒に向けて苦無を投げた。
速すぎる動きに、生徒が目で追うのは必死だった。
雪はそこまで瞬時に動いて、やってきた二人の苦無を弾き返した。距離を離しつつ、次の一手を加えようとする二人だけど、もう、さっきまでの余裕の顔はない。
雪にもそれは同じ事で、しかし前を向いて苦無を構えるその顔には迷いがあった。
戦いたくない、そう言いたげな顔に華音が黙るはずもない。
華音>…残念だわ。
これより、月華は忍術学園上級生と雪を対象とし、暗殺をする。
裏切り者には制裁を、狙った者には死を…。
そう言って華音は一輪の華を出し、地面に落とすとそこに苦無を刺した。
そして二人同時に塀へと走り出しそのまま、行ってしまった。
もちろん、後ろにいた六年生や他の生徒達は追いかけようとしたけど、それを先生が制した。
彼女達が行ってから、雪はその華の元に行き…その場でしゃがんでしまった。
武器を向けた。それは、忍術学園にじゃない。
月華という、育った場所へ…刃を向けた。
もう、後戻りは出来ない。
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作者名:霜月 | 作成日時:2020年3月6日 0時