三十二話目 迎え ページ35
兵>名称…?
雪>私達は、華の名前を名称としています。
月華の掟にはこれが一つあり、そして自身の殺した者の近くに名称の華を置くことで、誰が殺したのかを示します。
姉さんは藤の花。蓮花は椿。
しかし……この藤の花は…姉さんのではありません。
八>どういう事だ…?
雪>姉さんの藤の花は、必ず綺麗に刈り取られた跡が残っています。
なのに、この華は乱雑で華の形が歪…。
これは、姉さんの華ではありません。
そう言って、藤の花をお盆の上に置く雪。
もう二輪の華も見るけど、すぐに学園長や山田先生の方を見てしゃがんだ。
さっきとは違う、手枷も足鎖もつけていない。
今、ここで彼女は五人が傍にいてくれたから話した。
そして、山田先生の質問に全て答えた。
その真実がここにいる生徒達、先生方、学園長に示した。
山>…きたか。
長>…もそ!
長次がいきなり縄鏢を構えた時、襖を苦無が貫いてきた。留三郎達も武器を構えて、襖の向こうにいる待っていたもの達を警戒した。
五年生、四年生達もそれぞれ武器を構えて、そして五人は彼女を守るようにそこにいた。
山田先生、土井先生が襖により、勢い良く蹴っ飛ばして外が全開に見えるようになった時、また苦無が飛んできた。
そこに後ろにいた六年生全員が出てきて各自で飛んできた苦無を全て打ち返した。
華音>そうなるとは思っていたわ。
声が聞こえたところに目線をやれば、そこにはいつもお世話係をしていた時の着物姿はなく、見たことの無い忍び装束を纏い、武器を構えている見慣れた顔が二つあった。
笑ったその顔に、六年生達が怒らないわけがない。
なのに彼女はまるで何事もなかったように笑っている。そして…もう一人の方は四年生達の姿が見えると今までにないくらい睨みつけていた。
そして二人は…五人に守られるようにいる雪を見た。
華音>…雪、迎えに来たわ。そんな奴ら早く殺してこちらに来なさい。
蓮花>頭領は、姉さんを連れ戻すように言っていました。今なら、まだ頭領のお怒りも浅いはずです。
戻りましょう、姉さん。
二人がそこで待っている。
雪からすれば、ここで戻らなければこの先どうなるかわかっている。
裏切り者になるか、この場で彼らに刃をまた向けるのか。
手元にはさっき飛んできた苦無がある。
戸惑いが顔に出てしまう、今誰とも眼を合わせられない。
誰を信じればいいのか、わからない。
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作者名:霜月 | 作成日時:2020年3月6日 0時