二十二話目 笑顔の意味 ページ24
勘＞ふー…髪の毛燃えるかと思ったー…。
池からはい出てきたのは、同じ五年生の勘右衛門と…その勘右衛門に支えられた雪だった。
何故勘右衛門がいるのかとか思ったけれども、二人はすぐに彼らの元に向かい、池から上がらせた。
意識を失っている雪と、水浸しの勘右衛門。
あの一瞬で勘右衛門が助けに入ったと考えると、命を張った一瞬だった。
雷＞勘右衛門！怪我は…！？
勘＞俺は平気。でも雪が…。
八＞おほー！これはまずいぞ…！！
兵＞皆、こっちだー！急げー！
他の五年生達が急いで水の入ったおけやらを持ってきた。消火作業が着々と行われようとしていた時、八左ヱ門と兵助も彼らに気づきすぐに近くに寄ってきた。
八＞お前ら無事か！？爆発に巻き込まれたのか！？
雷＞…どうなのかな。
八＞…え？
兵＞…雪だろ。これやったの。
兵助の言葉にすぐ反応したのが、八左ヱ門だった。
他の三人は何も言わずそこにいる。
唯一、手当をしていた雷蔵の手だけは動き続けていた。
何も言わないという事はそういう事。
それをわかったからこそ、嘘が嫌いな八左ヱ門は…兵助の胸ぐらを掴んだ。
八＞雪が…こいつがやったって根拠はあるのかよ！
こんな怪我をして、ぼろぼろのこいつが！
何で、何のために！！
兵＞…それは、雷蔵達だって同じだろ。
それに、それは本人に聞くしかないさ。
八＞…っ…！
まだ意識を取り戻さない雪を、兵助は見つめていた。
悲しそうな表情で、でも…わかっていたと言わんばかりの落ち着きように、八左ヱ門は手を離し…消火作業の方に行ってしまった。
三＞…私も向こうに行ってる。
兵＞俺も行くよ。
二人も行ってしまい、残された勘右衛門と雷蔵。
そして雷蔵に手当をされている雪。
向こうの消火作業をしている所は落ち着きがなく、近くで燃えている炎の熱さは、離れていても感じる。ぼろぼろの庭に、燃えている建物。
そして…さっきまで一緒にいた、お世話係の彼女はこんなにもぼろぼろになっている。
あの一瞬の戦いで、何かが大きく壊れる音がした。
そして、涙を流して戦おうとしてきた雪。
最後に…笑った顔。
彼女の笑った顔は…二人も初めて見たものだった。
雷蔵が手首の手当を終えて、彼女の頭に手を伸ばす中…やっと雷蔵の口が開かれた。
雷＞…勘右衛門。雪は、本当に暗殺者なのかな…。
勘＞…え？
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作者名：霜月 | 作成日時：2020年3月6日 0時
