十三話目 冗談 ページ15
喜八郎の言葉が聞き間違いなのか、それとも本気なのか。その場にいた皆、硬直しつつ…蓮花の表情は少しずつ熱を増していた。
赤くなった顔が、そこにある。
彼女が見せたことの無いものを、彼らは見てしまった。
それなのに、喜八郎はいつも通りで、愛用の踏子ちゃんを持ちつつ頭の後ろに腕を組むと、そのまま振り返らずに歩き出した。
滝>きっ、喜八郎!!今のはどういうことだ!?
田>お前、あいつの事好いてるのか!?
喜>…んー?冗談だよ、冗談。
冗談、それを聞いた彼らはどういう事かと思ったけど、それよりも前に、蓮花がそれを聞いて苦無を構えたことが問題だった。
流石に殺気に気づいた彼らは慌てて正門を飛び出し、走り出した。走り出した瞬間、足元にやってきた苦無が間違いなく本気であてに来ていて、飛び出してからも蓮花の武器は彼らを追いかけ続けた。
しばらく響いた悲鳴と怒号は…忍術学園の外でよく聞こえていたのだった。
五年生は演習として各自の得意武器を使った個人戦を行っていた。五年生全体のものだから、い組とろ組の彼らももちろんいる。
互いに武器が交える音が響き、地面のする音と風を切る音が響く。
窓拭きをしていた雪はその光景を見つつ、作業をしていた。
現在、勘右衛門と三郎が戦っていてその動きは互角といってもいい。皆の歓声もよく響いてきて、こちらの目を引く光景は、手を動かすのも止めて身体を引き寄せてしまう。
雷>あれっ?雪?
雪>…不破君、お疲れ様です。
気がつけば、だいぶ近くまで来ていた。
気持ちが惹かれたのか、休憩していた雷蔵や兵助が雪に気づいた。
八左ヱ門は熱中して彼らの応援をしている。
雷>君はどっちが勝つと思う?
雪>…鉢屋君、ですかね。尾浜君の動きも悪くないと思いますが、鉢屋君の方が少々素早い身のこなし方なので。
兵>俺はやっぱり同じクラスの勘右衛門かな。
あいつ、天然って言われたりいつも甘い物食べたりしてるけど、戦う姿はかっこいいなあって男の俺でも思うんだよ。
雷>うわぁ…分かれちゃったか…。
僕はやっぱり同じクラスでもある三郎か…。
いや…確かに勘右衛門のあの動きだと三郎の動きを見切っているし、でもでも…うーん…うーん…。
彼の悩む癖がこんな所でも出ていると、これは悩んでいる間に勝負が着くと見える。
そうこうしている内に騒がしくなった向こう側。
立っていたのは、三郎だった。
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作者名:霜月 | 作成日時:2020年3月6日 0時