十話目 いつもより ページ12
華音の真剣な眼差しは、小平太であっても大人しくさせてしまう。しゅんとしてしまった彼に、華音は手を伸ばして頭を撫でた。
絵的に言えば主人と忠犬のように見えてしまう。
華音>じゃあ、私は食堂のおばさんのお手伝いに行ってくるわ。
仙>華音達の方も今日は特に気をつけてくれ。
もし外に出かけるのであれば行ってくれ、同行しよう。
華音>ええ、そうするわ。ありがとう、仙蔵。
手を振って去っていく華音の姿はいつも通りなのに、建物の角を曲がったその先で…彼女の姿を見た者はいない。
しかし、食堂に彼らが行けば華音は笑って迎えているのであった。
蓮花>…何してるの。
蓮花も同様に手ぬぐいを持って顔を洗っていた彼らの元に来ていた。
が、予想もしていない自体がそこには繰り広げられていた。顔を洗えば綺麗になるはずなのに、何故かそこには泥だらけの四年生達。
そして、後にあるのは穴。
ご機嫌な綾部喜八郎。
怒っている滝夜叉丸と三木ヱ門、他の人の髪を整えるタカ丸、蓮花の手ぬぐいを使って汚れを取る守一郎。
これだけで十分察しはつく。
蓮花>…馬鹿なの?
浜>返す言葉もないな…。
蓮花>…この後課題で外に行くんでしょ。
そんな格好で行かれても恥ずかしいから、湯に浸かって落としてきて。
今から火をおこしてくるから、その前にせめて泥は払いなさいよ。
意外な言葉に、四年生達は驚いていた。
勝手にすればと言われるかと思いきや、まさか湯の用意をしてくれる事にも意外だったけれども…。
蓮花>ちなみに…それで部屋にでも入ってみなさい。
あんた達全員の朝ご飯、抜きにするから。
殺気立った彼女の言葉に、黙った彼ら。
個性が強くて団結力はなくても、怒る彼女にはあまり歯向かおうとは思っていない。
以前、返り討ちを食らった滝夜叉丸がそこにいるから。
蓮花>…ちょっと。
滝>?
蓮花が向かおうとする前に、滝夜叉丸の頭に指をさした。何かやってしまったのか、滝夜叉丸がその場でわからない顔をしていると、蓮花に突然頭巾を剥がされた。
頭巾を広げた蓮花は、大きくため息をついた。
彼らにも見えた、喜八郎の穴に落ちた事で出来たのか頭巾には穴が空いていた。
蓮花>…はぁ…。
ため息をつきつつも、彼女は頭巾を持って湯の方へ向かった。
今日の彼女は何だか変だと、皆が思っていた。
いつもより、優しいと。
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作者名:霜月 | 作成日時:2020年3月6日 0時