【魔入間】カーネーションの花束を。【短編集】 (ページ15)

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アズイル前提モブ→イル【林檎の苦痛】ページ15

私は、悪魔学校(バビルス)でシェフの見習いとして働いています。
やっていることといえば、芋の皮むきくらいですが…。

「おい！お前は皮付きのポテトでも揚げる気か！？もっと薄く剥け！」

「ひぃぃ！すいません！すいません！」

今日も職場の先輩に怒られた。

「はあ、なんで私はこんなにも料理が出来ないんだろう」

パパもママも、家の名に恥ぬ程、料理が上手いのに、自分だけ芋の皮むきさえ満足に出来ない。
ざく、ざく、と芋にナイフを入れるとまたポテトのように分厚い皮がバケツに落ちる。

「こんなんじゃまた先輩に怒鳴られる…」

次こそは、次こそは。と、焦れば焦る程芋の皮は分厚くなっていく。

「イルマくん、ちょうどいい所に。そこで皮剥きしてる新人を手伝って貰ってもいいかな？」

「いいですよ」

それが、彼との出会いだった。
彼は芋の皮を薄く剥くコツを教えてくれた。

それからも、たまに芋の皮むきを手伝ってくれて、売店の店番や、用務員さんの手伝いをしていると教えてくれた。

いつも手伝ってくれる彼に、何かお礼がしたい。料理の出来ない自分でも唯一できる、家系の得意料理。

魔界リンゴのパイ。

きっと彼も気に入ってくれるはず。

「イルマくん。ちょっといいかな？」