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アズイル【カルミアの焔】 ページ16

「入間様、入間様ー」

何処へ行かれたのだろうか。長い廊下を見落としが無いように空き教室の中も一つ一つ見て回る。

「───」

「──」

教室の外から声が聞こえてくる。入間様かもしれないと、声がする方へ向かうと辿り着いた先はバラム先生の生物学準備室だった。

僅かに空いた扉の隙間から、そっと中を覗くと入間様の後ろ姿が見えた。

「イル─」

「すいません、バラム先生。いつも相談にのってもらって」

「気にすること無いよ。キミは人間。他の人には知られたくない事だってあるだろうし、僕でよければいつだって相談に乗るからね」

──人間?入間様が?
そんなはずは無い。入間様はサリバン理事長の孫で、かなりの魔力を有している。授業で魔術を使っているところだってこの目で見たのだ。

それなら何故、入学式で魔術を使われなかったのか?飛行レースで飛ばれているところを見なかったのか?

魔力も羽も持たない原始的な生き物であるとされる人間であったのならば、私が知らない言葉を知っているのも、魔界には無いサクラという花を咲かせたのも、全て納得が行く。

あの魔力も、オトモダチという言葉も全てがまやかしだったのか?

ふつふつとドス黒い感情が心を支配していく。

「アズくん?」

大丈夫?と顔を覗き込むその顔でさえ、演技ではないのかと疑ってしまう。

貴方を素晴らしい悪魔だと盲信していた頃からは考えられないほど、乱暴に腕を掴む。そのまま引きずるように廊下を歩いていくと、背後から「アズくん、ねえ」だとか、「痛いっ…」だとか声が聞こえてくる。
しかしそれを無視していると、その声は次第に小さく、細くなり…すすり泣くものへと変わっていった。

空き教室へ突き飛ばすようにして中に入れると後ろ手で鍵を閉める。

「貴方にとって私は、何だったのですか?秘密を打ち明けるに値しない、都合よく動く駒ですか?」

ねえ?とがたかた震える華奢な身体に馬乗りになれば「ひぃっ」と情けない悲鳴が口から零れる。

「アズくっ…、僕は…」

それ以上は聞きたくない、と細い首に手をかけ、ゆっくりと力を込め──



「──っ、はぁ」

跳ね起きるようにして目が覚めた。めざ魔しを見ると何時もの起床時間より一時間早かった。

「何故、あんな夢を?」

入間様が人間などと、ありえるはずがないのに。
きっと、魔術開発師団の活動で疲れていたからあんな変な夢を見たのだ。そうに決まってる。

そう結論づけ、顔を洗う為洗面台へと向かった。

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ラッキー使い魔(魔獣、精霊等出ます)

ケルピー


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作者名:しょくらぁと | 作成日時:2019年12月4日 19時

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