五 ページ5
時がたち、少しずつ新しい本丸での生活にも慣れてきた。まだ呪いは解けていないが、誰かがいれば審神者にも会えるし庭にも出られるくらいにはなっている。
「慌てなくていいからな」
今日は非番だったらしい日光が一緒にいて、あまり動けない私の手を引いてくれている。立場的には当代の左腕である日光が上か先代に目をかけてもらっている私が上か微妙なところで、結果的にお互いタメ口呼び捨てになった。私からすると兄貴分だけど、向こうにしてみれば私の方が上だから。めんどくさいしなんでもいいけど。
「あっ舞花さん、こんにちは！！」
「こ、こん、にち、は」
五虎退が合わせてくれた秋田。話すことの訓練に付き合ってくれてる短刀で、あまり返事のできない私にたくさん話しかけてくれて、ゆっくり待ってくれて、キラキラした目で見たものを教えてくれる。
「今日は僕もいるよ♪こんにちは、舞！」
「乱、も、こん、に、ち、は」
「ねぇ、髪の毛いじってもいい？」
ワクワクした様子の乱に頷くと、そのまま縁側に腰掛けるように促された。
「髪、伸ばし、て、いい、の？」
「うん！ボクたちみたいに長い刀も多いしね」
ふと、秋田が教えてくれたことを思い出した。乱の髪は、“すとろべりーぶろんど”というらしい。
「すとろべりー、ぶろんど？」
「あ、ボクの？そうなのかな。秋田から？」
「うん。外つ国の、言葉、って。いろいろ、教えてくれたの。政府には、乱も、いたけど、部署が違った、から」
私の髪がとかされて、器用に編み込まれていく。あの本丸では邪魔だと切られていたし、たまに手入れされても目や耳と同じように毎回傷つけられていたから久しぶりの感覚。
「…日光。髪の毛、貸して」
日光の後ろに移動して、三つ編みに編んでいく。なんとなく、昔やっていたからやりたくなった。
「ずいぶん派手になってんね」
「舞が、楽しそうにするものですから」
「うはは！いいなぁ、僕も頼んでみるか！」
「そうか…私では、髪を編んでもらうわけにはいかないからな…子猫はどうだ？」
「お頭…俺も流石に短すぎる、にゃ…」
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作者名：かえで | 作成日時：2023年8月6日 14時
