忘却審神者保護任務 (ページ2)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:478 hit

二ページ2

門を出ると、加州も消えていた。なぜかはわからないが、なんとか逃れられたらしい。
「あれ…？繋がらない…」
［もう帰ってこないで。あんたの家はないから］
母に電話をかけるも繋がらず、メッセージアプリにそう届いた。反論する間もなく、連絡先が消える。なぜか記憶にある、家族に捨てられる絶望。元々、家に居場所なんてなかった。それでも、帰るところがあった。愛されなくても、家族がいた。もう、形だけの家族もいない。

［◾︎◾︎◾︎になりま◾︎◾︎か？あなた◾︎ら◾︎っと…］
［あー。◾︎◾︎◾︎の子です。◾︎◾︎清◾︎。扱い◾︎ら◾︎◾︎ど、◾︎能は◾︎◾︎◾︎◾︎ってね］
［俺が◾︎のこ◾︎を愛◾︎る。だか◾︎、◾︎も俺◾︎◾︎してね］

手が震えて、スマホが滑り落ちた。
「よっと。ギリギリセーフ？」
地面に叩きつけられる寸前で小さな手がスマホを受け止めた。はい、とこちらにさしだしてくるのは、どこかに行ったはずの紅ちゃん。
「なんで…？」
「なんでって…壊れたら悲しいですよね？」
さも当然、といった顔をして首を傾げる。
「紅、多分怖がらせてると思うけど」
いつのまにか加州が私の後ろに立っていた。
「えっ！？ごめんなさい！」
訳がわからない。怖くないはずがないだろう。
「なんなの…？」
「やっぱり、思い出してないか…」
悲しげに目を伏せて、紅ちゃんがつぶやいた。
「仕方ないよ。こんのすけ！」
加州の声と共にぽんっという音を立てて、空中に狐が現れた。

［は◾︎◾︎まして私は【◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎】と申◾︎◾︎す
　◾︎◾︎◾︎を務め◾︎◾︎て頂き◾︎す◾︎で ◾︎後お見◾︎◾︎置◾︎を］

「はいっ！」
「宵桜本丸初期刀、加州清光。忘却審神者の保護完了」
私の手を掴んで、そう狐に話しかける。連れて行かれる、そう感じて振り解こうとするが、加州は全く動かないし手も解けない。
「はなして！」
「ごめんなさい、主。手荒な真似はしたくないですが、主を連れて帰らないといけないんです」
紅ちゃんにも手を掴まれた。
「人違いじゃないの？私はあなたの主じゃ無いと思うけど…」
「違いますよ…お兄ちゃんが主を間違えるなんてありえません。あなたが初めて呼んだ刀なんですから」
泣きそうな顔で見上げられる。言ってる意味はあまりわからないが、そんな顔をされたら振り解こうにも振り解けない。
「じゃ、行こっか」
加州がこちらを向いて、声をかけてくる。手を引かれ、目の前に現れた鳥居に足を向けた。