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私はなぜゼミが同じだけの男から逃げているのだろうか。1束だけ長い黒髪と赤い瞳の、ちょっと小柄で華奢な男。服は黒が多くて、爪は赤く塗っていて、おしゃれが好き。それが加州清光。クラスの中心にいるようなタイプで、私とはゼミでちょっと喋るくらいの仲。今ずっと追いかけてきている以外、そんなに関わりを持ったことはない。
「ねー、まだ逃げるの？俺そんなに怖いかなぁ」
口角は上がっているが、目が笑っていない。長めの黒いコートと赤いマフラー、腰に日本刀なんて怖いに決まってる。見失ったらダメな気がして、返事はせず目を離さずに、じりじりと門に向かう。加州は話しかけながら、ゆっくりと追ってきている。多分本気になったらすぐ捕まるが、そんな気はないらしい。響くのは私のスニーカーの微かな足音と、加州のヒールブーツの音だけ。
「お兄ちゃん、怖がらせすぎだって」
外に出た途端、頭の上から高めの声が聞こえた。街灯の上に立っていて、音もなく降ってきたのは、確か加州の妹。紅ちゃんだったと思う。確か「こうか」って名前で、紅って呼んで欲しいと言われた。
「ですよねっ。怖がらせんなって言われたのに」
こちらを向いた、加州とよく似た赤の瞳はこれまた全く笑っていない。首を傾げたのに合わせて、耳元の赤い花のピアスがゆらりと動く。兄とよく似た黒いコートを着こなした、私よりも年下のはずの女の子に言いようのない恐怖を感じた。
「そんなことないって。ただ話しかけてるだけだし」
「まぁいいけど。頑張ってね」
そのまま2人に追われることを覚悟したが、そのまま紅ちゃんはどこかに行ってしまい、また加州のヒールブーツの音だけが響いていた。
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作者名：かえで | 作成日時：2023年4月7日 10時
