第十一話 ページ11
「それでここは……」
先生が問題の解き方を説明している。
説明に集中したいのだが、どうしても先生の方を見てしまう。
「…っ!」
目が合ってしまった。
急いで黒板の方に視線を移す。先生のことを見つめすぎたようだ。私らしくない。
勉強だけに集中すればいいのに、何故先生の方に気がいってしまうのだろう。
恐る恐る先生の方を見てみると、先生はもう違う方を見ていた。
少しほっとする。と同時に、悲しくなる。
たまたま目が合っただけとは言え、もう少し私を見てほしかった。
なんて私は我儘なんだろう。
先生を好きになって変わったことと言えば、目に映る景色が鮮やかになったことだろうか。
今まで平凡な毎日を送っていた。
白黒……とまではいかないだろうが、でも私の目に見えていたものは、あまり色づいていなかったように思える。
だけど、先生を好きになってからはどうだろう。
目に映る全てが、赤や青、黄色に桃色……鮮やかに色づいていった。
学校に行くのを楽しみにしている私がいた。
苦手な数学も、頑張ってみようと思えた。
全ては先生のおかげなのだ。本当に感謝しなければ。
先生のことを考えていたら自然と笑顔になっていたのだろう。
「何か面白いことでもあったか、(人1)」
という先生の言葉にハッとする。
先生の方を見ると、不思議そうにしながらも笑っていた。
その表情に胸が高鳴る。それは反則だ。
「何でもないです、すみません」
「そうか。別のことで笑うのもいいけど、俺の話でも笑ってくれよ」
なんて意地悪そうに笑う先生に、女子たちは完全に心を奪われている(気がする)。
勿論私もその内の一人だ。
ああ、やっぱり私は先生のことが好きなのだなと思った。
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作者名:りつ(みずりんろーる) | 作成日時:2018年11月26日 17時