第五話 ページ5
最近数学の授業中に、(人3)先生が話しかけてくれるようになった気がする。
話しかけてくれる、と言っても分からないところがあれば教えてくれたり。
前までは、教えてくれるどころか仲の良い生徒達に呼ばれて、彼らとお話していることが多かった。
「うっ……分かんない……もう無理だ」
「大丈夫だって、(人1)なら解ける」
珍しく解けない問題があった。
いつもならササッと終わらせることができるのだが、今日は難しくて苦戦している。
先生に教えてもらっているのだが、それでも理解できなくて、もう投げ出してしまいたくなる。
「そんな無責任な……」
「だって俺、知ってるから。前に質問に来た時も解けたし」
「あれは先生の教え方がお上手で」
「だったら、この問題も解けるだろ。俺が解けるまで教えてやるから」
先生は私の肩をぽんぽん、と優しく叩いた後、話しながらノートの端に文字を書き込んでいく。
やはり、先生の文字は綺麗だった。
それに分かりやすく丁寧に教えてくれて、もう一度解けない問題に挑戦してみると、さっきまでの苦労が嘘のように、問題がスラスラと解けた。
「え……先生、解けた!!」
先生の方を見て笑う。
すると、先生はとても嬉しそうな顔で、こう言った。
「だから言っただろ?」
先程叩かれたよりも少し力が入っていたのだろう。
肩を叩かれるが少し痛い。
でもそんな痛みも気にならないほど、私は問題を解けたことの嬉しさに浸っていた。
先生が他の生徒に呼ばれて、そちらへ行ってしまうと、何故だか悲しくなってしまう。
また後で来てくれるだろう。
そう自分に言い聞かせて、他の問題に取り掛かった。
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作者名:りつ(みずりんろーる) | 作成日時:2018年11月26日 17時