13話 ページ14
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「あれ、迅さん何かゴキゲン?」
「えっ、…ん〜そうかも」
「やっぱり!」
トリオンでできた市街地の中、にこにこと笑う彼女に迅は内心ヒヤリとした。
いつもと同じ様に振舞っている彼の表情筋は、巷では「何を考えているのか分からない」と定評があったし、実際、自分でもそうしている自覚がある。それなのにこうも容易く見抜いてしまう彼女は末恐ろしいと思う他なかったのだ。未来を知っているのなら、尚更。
「ねぇ、Aはさ、隊を作れって言われたら作る?」
ひとつ。問いかけた。
先の未来は2つに分岐していたが、迅はこの質問の答えは1つだろうと予想しているし確信すら得ていた。なぜなら彼の知る彼女は頗る貪欲だったからだ。
「入るじゃなくて作るですか?
…まあ、まだいいかなぁ。」
「…Aならそう言うと思った」
迅は満足そうに笑うものだから彼女は疑問に思って小首を傾げたが、その後すぐ不審そうな目で彼を見つめた。
「…なんか企んでます?」
「いんや何も?」
「嘘でしょ!」
迅はハハハとはぐらかす。
いつもは知りたがる彼女だったが、それを見て何となく聞くのを辞めた。
「…まあ、これから面白くなるからさ。期待しててよ」
「へへ、楽しみにしてますね」
未来の話をする迅は決まって悲しい顔をするが、今日は違う気がして笑みがこぼれた。
少し間が空いて、やっとやる気になったのか2人はそれぞれ構えの姿勢をとる。
「いきますね」
「何時でもどーぞ」
迅は太刀川との戦闘を思い出させる何かを感じながらスコーピオンを取りだした。
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「あーあ、すーぐやられちゃった」
地面にへたりこんで彼女はそう嘆いた。
「ま、まだまだ実力派エリートには敵わないってことだね」
「ウワー!それ、自分で言います?」
「事実だから仕方なーい」
「そうですね!」
よっこいしょと見た目に似合わぬ言葉を発しながらゆっくりと立ち上がる彼女。
瞬殺されてしまったことに未だ不満はあったが、もう一度をお願いするつもりはない。迅が休みたいのは分かっているからだった。
もう戻りましょ、と彼女は迅を促したが、依然として迅は立とうとしない。ただその蒼い双眸で彼女を見ていた。否、視ていたのかもしれなかった。
「A」
「はい?」
「射手トリガー、威力も弾速も前よりも成長してるみたいだけど…何かした?」
分かっているみたいな変な顔をしていたと彼女は後に語るのだった。
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ほのか(プロフ) - 続きが楽しみですー! (2022年5月22日 15時) (レス) @page16 id: 3995d0bd0b (このIDを非表示/違反報告)
何も言わずに旋空弧月 - めっちゃおもろいです一気読みしました。何年でも待ちます。二宮隊贔屓だから隊服スーツで嬉しいっす! (2021年5月27日 16時) (レス) id: 43784786f9 (このIDを非表示/違反報告)
あきかぜ(プロフ) - コクーンさん» 全てイメージだと私は思っています。とにかくセンスがいるポジションですよねぇ(^_^;) (2021年2月13日 14時) (レス) id: 24b04063a4 (このIDを非表示/違反報告)
コクーン(プロフ) - 射手の射程、弾速、威力ってどうやって決めてるんでしょうね?www (2021年2月13日 13時) (レス) id: dd8a571986 (このIDを非表示/違反報告)
あきかぜ(プロフ) - コクーンさん» コメントありがとうございます(^^♪ そうですね、こんな軌道とかどう?とか話し合ったりしそうです笑那須さんの入隊はまだなので出てくるのはまだ先になると思いますが絶対絡ませますのでそれまでお待ちくださいね〜! (2021年2月7日 22時) (レス) id: 24b04063a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あきかぜ | 作成日時:2021年2月7日 14時