【APH】空模様、恋模様。【短編集】 (ページ6)

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アイスキャンディー、溶けた（葡）【学パロ】ページ6

放課後、来月に控えた学校祭に向け、私はアンゼルムくんと居残り作業をしていた。
｢なあ、アイス食いたい。買うてくるわ｣
そう言うやいなや、彼は教室を出ていってしまった。本当に自由ね。1人取り残された私は彼のマイペースさに苦笑しつつ、また黙々と作業を始めるのだった。

｢ひゃあ!｣
突然頬に冷たいものが当てられ、変な声が出る。アンゼルムくんがアイスキャンディーを当てていた。下の自販機で買ったらしい。
｢驚かせないでちょうだい｣
｢後ろのドアから入ったんよ｣
｢気が付かなかったわ……｣
怒らんといてー、と間延びした声でいう彼から、反省の色は読み取れなかった。
｢これ、Aの分。ラムネ味｣
｢いいの?｣
｢ん。要らんなら俺が｣
｢いただきます｣
彼からアイスを受け取って、封を切る。棒を摘んで取り出せば、涼し気な空色が現れた。
ちらりと彼を見れば、シャリシャリとアイスを食べていた。心なしか嬉しそう。私もアイスを頬張った。ぺろぺろ舐めて甘さを楽しんだり、かじって冷たさと食感を楽しんだり。この暑さで食べるアイスは幸せそのものだ。
｢……なんか、えろい｣
｢は｣
｢その食べ方、えろいわ｣
どこが?と首を傾げると、彼は続けた。
｢だって、そうやってぺろぺろ舐めて、吸って。なんや誘っとるん? って思う｣
そう言いながら、彼は私の腰に腕を回した。
｢な、何言ってるのよ!そんなわけないじゃない!｣
｢でも、そう見えるんよ。仕方ないやん｣
｢そういうものなの?｣
｢そういうものや｣
それとも嫌なん?と少し拗ねたように問う彼に、私は答えた。
｢嫌じゃないけど、今はだめ、学校だもの｣
｢ええやん、ここ誰もおらんし、二人きりやし。キスくらいしてもええと思う。｣
そのままぐいと引き寄せられて、互いの肩が密着する形になった。汗の匂いがした。
｢なあ、だめ?｣
学ランの前は大きくあけられて、シャツはいつもよりボタンが外され鎖骨が見える。肌がうっすら赤いのは、暑さか、それとも。とにかく、いつもよりも色気の増した彼に迫られて、嫌とは言えなかった。
｢キスだけよ。それで我慢して｣
｢ん。おおきに｣
そのままちゅ、ちゅ、と控えめな音を立てながらキスをした。首に、額に、頬に、唇に。段々我慢が出来なくなったらしい彼が懇願するような目で見てきたから、言った。
｢続きは、今夜ね｣
明日は休日。きっと、長い夜になるんだろうな。彼は目尻を下げて笑った。
｢楽しみにしとくわ｣
アイスキャンディーは、もう溶けていた。