【APH】空模様、恋模様。【短編集】 (ページ22)

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独立②（英）ページ22

｢どうして?｣
｢どうしてもだ!｣
｢フランはいい人よ?そりゃあお兄ちゃんとはすっごく仲が悪いけど、でもそれを抜きにすれば優良物件じゃないかしら?優しいし、紳士的だし、料理上手だし｣
勿論お兄ちゃんとフランさんが仲が悪いことは重々承知の上だ。反対されることも覚悟はしていたが、それでもこんな否定の仕方には納得できなかった。何より好きな人を侮辱されたのが、悔しくてたまらない。努めて冷静に反駁しようとするが、声音に怒りが滲んでしまう。腹の底でふつふつと煮える怒りでいっぱいになった鍋をぶちまけないようにしながらも、ああ私はこういうところは結構アル兄さん寄りだと思うなあ、なんてどこかで傍観している自分がいた。
｢あれが優良物件だぁ?はっ、んなわけねえだろ。第一あいつすぐナンパするし!｣
｢それは……まあ、女性慣れしてるところはあるけれど｣
｢じゃあ!｣
｢でも、納得いかないわ。お兄ちゃんの主観だけじゃなくて、なにか明確な証拠や理由でもないと。例えば……そうね、フランが浮気してるとか｣
鼻を鳴らしたお兄ちゃんの言葉を認めざるを得なかった私が目を伏せながら答えると、お兄ちゃんは手をついたままぐっとこちらへ身を乗り出した。ぎらぎら輝く緑色の炎のような瞳に、私が映って揺れている。見たことがないほど必死だった。それがどうしてか現実味がないように思われて、段々と活動写真─ああ今は映画と言うんだったか─をスクリーン越しに見ているような気がしてきた。思いのほか冷静に言葉を返せたのは、そのおかげかもしれない。お兄ちゃんが興奮すればするほど、対照的に私の怒りや戸惑いがすっと引いていくのがわかった。だから俺に賛同しろと強い声で言葉にせずとも表すお兄ちゃんに、私は食い下がることができた。

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