第40話 ページ43
第40話
「そんな感じで私は死んだのよ。ふふっ、鈍いあなた達に私の未練が何だか分かったかしら？」
そうやって笑いながら「少し席を外すわね」とどこかにフラフラと行ってしまった生徒会長を、僕は引き止めることが出来なかった。
僕だけじゃなく、話を聞いたみんな顔が真っ青だ。
あまりにも大きな話。
家族に殺されるなんて、大きすぎる。
生徒会長がそんな事になってたなんて、全然気が付かなかった。だって僕達が見てきた生徒会長は、いつも笑顔だったから……そんな重圧に耐えていたなんてとても思えない。
こんな時に、僕がオールマイトに初めてあった時のオールマイトの言葉を思い出す。
『私が笑うのはヒーローの重圧、そして内に湧く恐怖から己を欺く為さ』
生徒会長も……同じ、なのかな。
「結局、未練とはなんだったんだ？」
飯田くんが当初の目的を思い出しそう切り出した。でも、轟くんも僕も首を横に振る。死因の方が衝撃的すぎて未練のことまで分からなかった。
すると八百万さんが「女心が分かっていませんね…」と呟く。その瞳は潤んでいて、今にも涙がこぼれ落ちそうだ。
切島くんも、分かっているのか気まずそうに目を伏せる。
「死の直前、女として幸せを感じてみたかった。そう思った鳳憑さんは爆豪さんを思い浮かべたんですのよ？」
「う、うん……」
「だからきっと…………爆豪さんに１人の女性として見て欲しかったんですわ」
八百万さんの言葉に、僕と轟くんと飯田くんは目を見開く。そういうことか、と。
誰から見ても凄い人で
周りもそんな彼女には近づけず
家族に殺されるという悲劇にあい
彼女が死の間際に願ったのは
誰もが願うであろう平凡な願いだった。
「鳳憑さんは爆豪さんに、惚れていたんです」
救えない。
僕には、とてもじゃないけど救えない。
願いが叶えば彼女は消えてしまう。
消えないためには願いを叶えてはいけない。
でも、散々苦しめられた彼女の
そんな小さな幸せを
邪魔する勇気なんて僕達にはなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 766人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mayu0809!(プロフ) - NAOKI様の小説最近見つけて読ませて頂いているのですがどの話も表現が尊くて大好きです！挿絵も沢山入れてくださっているので読みやすくて文字だけの小説読むのが苦手な私にとって有難いです！ (2021年5月22日 13時) (
レス) id: 3167097c83 (このIDを非表示/違反報告)
mayu0809!(プロフ) - NAOKI様の小説最近見つけて読ませて頂いているのですがどの話も表現が尊くて大好きです！挿絵も沢山入れてくださっているので読みやすくて文字だけの小説読むのが苦手な私にとって有難いです！ (2021年5月22日 13時) (レス) id: 3167097c83 (このIDを非表示/違反報告)
晏(プロフ) - この作品が好きすぎて、何度も見直しています！ 感動しすぎてこれを読む時は、ティッシュが必ず横に置いてあります。 (2021年3月17日 0時) (レス) id: 440a1ef8ed (このIDを非表示/違反報告)
きなこ餅(プロフ) - 感動です...あれっ、足元に大量のテェィッシュが...笑。素敵な文章ですね！こんな文章が書けるようになりたいです。これからも、応援しています！ (2020年1月30日 21時) (レス) id: 349b1bb88e (このIDを非表示/違反報告)
みゅーう - めっちゃ感動しました。ボロ泣きしました。素敵な作品を書いて頂きありがとうございます！ (2019年7月22日 1時) (レス) id: b0c04a8a2c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2017年12月15日 7時
