第39話(挿絵付き) ページ42
第39話
翌日、外は土砂降り。
雨の音を聞きながらジメジメとする部屋で身支度をしていた。使用人に化粧をされ、長い髪を櫛でとかれる。
すると襖が開き母が現れ、私の隣に座った。
「折角の晴れ舞台、着物じゃなくてよかったのですか？」
「ええ、この制服が好きなんです」
折寺中学の黒いセーラー服。
着物よりもこっちがいい。
身支度が終わり使用人が出ていく。
シン…と静まりかえる部屋。
「この度は名誉ある役目を任せて頂けたことに、感謝しなさい。これで貴方は私の誇りです」
そう言った母の目は
やはりどこまでも深い冷えた目だった。
母に連れられ別の部屋に移動する。そこには１つの真っ白な布団と、３人の医者がいた。恐らく闇医者だろう。
母は闇医者に「あとは任せましたよ」と言ってどこかに行ってしまった。
家のために死ぬというのに
誰一人、側に居ようという者はいない。
闇医者の指示で布団に寝転がると、着々と準備が進められる。視界に広がるのは天井だけ。
ああ、私は本当に死ぬのね。
なんて今更そんな事を思ってしまう。
楽しい事なんてほとんど無い人生だった。まあ唯一、ここ最近は爆豪勝己のお陰で面白かったけど。
そういえば、彼との約束……。
彼はきっと怒るんでしょうね。
あんなに実力があるなら、まあ雄英の試験は大丈夫でしょう。ヒーロー志望というには少し性格に難ありだけれど、きっとこれから成長していくわ。
無事に雄英を卒業して、ヒーローになって、暖かい家庭を作って幸せになりなさい。
私も、少しくらい女としての幸せとか味わってみたかった。といっても、私なんかを受け入れてくれるような人いないでしょうけど。
もしも相手が爆豪勝己とかだったら
きっと私も自分の身分なんか忘れてしまいそう。
ふふっ、それはそれで面白そうではあるけど。
闇医者が注射器を取り出し私の腕に打ち込む。
次第に体の力が抜けていき、息が少しずつ苦しくなる。どうせならもっと苦しまない死に方にして欲しかった。
もしも来世というものがあるなら
ただの女として
幸せというものを感じてみたい。
ああ、こんな事を考えている時に
彼の顔が浮かぶなんて
……本当に、重症ね。
コテンッと力をなくした頭が横に向き、私は目の光を失いながら意識を失った。
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mayu0809!(プロフ) - NAOKI様の小説最近見つけて読ませて頂いているのですがどの話も表現が尊くて大好きです！挿絵も沢山入れてくださっているので読みやすくて文字だけの小説読むのが苦手な私にとって有難いです！ (2021年5月22日 13時) (
レス) id: 3167097c83 (このIDを非表示/違反報告)
mayu0809!(プロフ) - NAOKI様の小説最近見つけて読ませて頂いているのですがどの話も表現が尊くて大好きです！挿絵も沢山入れてくださっているので読みやすくて文字だけの小説読むのが苦手な私にとって有難いです！ (2021年5月22日 13時) (レス) id: 3167097c83 (このIDを非表示/違反報告)
晏(プロフ) - この作品が好きすぎて、何度も見直しています！ 感動しすぎてこれを読む時は、ティッシュが必ず横に置いてあります。 (2021年3月17日 0時) (レス) id: 440a1ef8ed (このIDを非表示/違反報告)
きなこ餅(プロフ) - 感動です...あれっ、足元に大量のテェィッシュが...笑。素敵な文章ですね！こんな文章が書けるようになりたいです。これからも、応援しています！ (2020年1月30日 21時) (レス) id: 349b1bb88e (このIDを非表示/違反報告)
みゅーう - めっちゃ感動しました。ボロ泣きしました。素敵な作品を書いて頂きありがとうございます！ (2019年7月22日 1時) (レス) id: b0c04a8a2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：NAOKI
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/naoki-/
作成日時：2017年12月15日 7時
