59 : ちゃんと選んで ページ17
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舌打ちなどしながら、五条先輩の腕から降りるべく身体をよじれば。
逆に逃すまいと言わんばかりに強まったのは、その腕の力。
………いだだだだ、いや痛いよ最強!
夏油先輩はこちらを見て面白そうに笑いながら、車から降りると、一足先に歩き出した。
そうして見返り美人よろしく、やたらと優雅な仕草で振り返り___
「………そうそう、悟。私は今もう、Aに伝えたから」
「は?…………何をだよ」
「私も結構、Aに本気だって」
じゃあまた後で、と。
それは嫌味なくらい余裕のある口ぶりで、夏油先輩は再び歩き出す。
………え。
おい待て待て、この状況で置いてくなよ前髪……!
「………」
『あ、の、五条先輩。私もう自分で歩けるんで……』
「俺も」
『あ、はい。歩けますよね先輩も』
私の当たり前が過ぎる同意に、「違ぇよ」と最強は眉を大きく寄せてツッコみ。
その透きとおった蒼を、私の瞳に合わせてきた。
「………俺だって本気だわ。傑より絶対ぇ前から」
『は?』
いや何この話の流れ。
車中からずっとおかしいだろ。
これってアレかな?
今から「はい引っかかったー!」とか言われて、「ドッキリ大成功!」ってテロップが画面に出てくる感じかな??(希望的観測)
「A」
『あ、はい。すみません』
まだ疑問符満載のバグった脳内のまま、呼ばれた名前に反射的に反応すれば。
「今すぐ、じゃなくてもいーから」
『はい』
「………ちゃんと選んで。俺か傑か」
それはあまりにも、真剣な眼差しで。
『二択しかねーのかよ!』なんていつものようにツッコむことさえ、はばかられる程で。
まるで金縛りにあったかのように、動けなくなってしまった私は。
…………ただ呆然と、その蒼を見つめたのだった。
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