責めて 宥めて、甘いキスで。【呪術廻戦】【短編集】

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するわけないでしょ、と一言だけ反論して、こっそり溜息をつく。



そもそも相手は七海建人だ。

むしろ「願い下げですね」って言葉だけは丁寧に、向こうからばっさり断られるのがオチ。


まあ、言わないけども。



だいたいさあ、と不満タラタラな口調が、すぐ傍まで近づいてきた。



「距離が近いの距離が！必要以上に！」



極甘コーヒーを片手に、彼はソファ、私の隣へと腰を掛けた。口元はまだ尖ったままだ。


……………アラサーとは。(2回目)




投げ出された脚が、少し離れたローテーブルに軽くぶつかる。そこには私用のカップが、いつの間にか置かれていた。

中身は多分ブラックコーヒー。(と、思いたい)



テーブルに少しだけ零れてしまったそれを眺め、脚が長過ぎるのも大変だな、なんてぼんやりと考える。



『距離って言われても……』


「わからないって言うなら、生徒以外の男とは今後、半径1m以内の接近を禁止します」


『………』


「ねえ今、めんどくさいって思ってるでしょ僕のこと」


『………』


「あのさAちゃん、ここは食い気味に否定して？」




＿＿＿ごめん、めんどくさかった。(小声)




まったくAは、と未だ不満げな色の声で、彼はコーヒーに口をつける。その甘さ、想像するだけで胸焼けしそう。



「わかってないんだよね、ほんと」


『男心ってやつが？』



これまでの日々で、彼に幾度か言われたことのあるフレーズは、自分から口にした。


まあ私、これでも女だし。
男心とか、確かにわからないし。



「うん、それもだけど。そもそも僕が、」




＿＿＿＿君をどれだけ好きか、ってことをさ。




不意に耳元でひそやかに囁かれた言葉は、甘いコーヒーと共にふわりと、そこで香る。


アルコールのような、下手をしたら猛毒のような。

全身が痺れていく程の。




彼はそうやっていとも簡単に、私のスイッチを押してくるから。


本当に本当に、困る。


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