責めて 宥めて、甘いキスで。【呪術廻戦】【短編集】

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はあああ、とわかりやすく、特大の溜息をついてやってから。



『嘘つき。絶対わかってたよね、あれ』



あれ、とは。
3時間ほど前の話になる。







仕事終わり、用事があってうろついていた街中で偶然、本当に偶然＿＿＿＿彼を見かけた。


多くの人々が行き交う中、正面から歩いてきた2人組の内1人はまさに今、私の隣に座る彼で。


ほんの3、4メートルの距離を思わず二度見したのは、彼が私の知らない女性を連れていたからに他ならない。



「気になんなら、声掛けりゃ良かっただろ」


『はあ？！』



いや大きな声出た。
私は間違ってない、甚爾さんの感覚が違うんだ。

あのさあ、と右斜め上を睨みつけた。



『自分の好きな男が、自分以外の女を腕にぶら下げて歩いてる場面に遭遇したら、何て声掛けるのが正解なのかな？！』


「好きな男、ってのは認めんのか」


『うるさい。今そこツッコまないで』



もう一度大きな手をつねってやれば、「はいはい」とやる気のない返事。悪びれてすらない。



(………まあ、私に怒る権利があるかは)



厳密に言えば、怪しいのだ。
だって彼と私は＿＿＿＿



『………あそこで修羅場を繰り広げて許されるのは、ちゃんとした彼女だけでしょ』





あーあ。言ってしまった。


「私達はちゃんとした関係じゃない」って、自分で認めちゃった。

認めたくなかったから、今まで言及しないようにしてたのに。



だって甚爾さんはそんなの、求めてないんだし。
雨風しのげる部屋と食事が約束されれば、それで良いんだし。




それでも私は少しでも長く、一緒に居たかったから。

「面倒くさい女」なんて思われちゃいけないって、その核心には触れずに。



(ダメだったなあ、でも)



ビジュがめちゃくちゃ好み、というわりと簡単な一目惚れから始まった、この片恋。


自分が考えていた以上に、本物だったらしい。

どうにも情けないことに。


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