甘やかな唇【不死川実弥】【冨岡義勇】

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コースの終わり、デザートとエスプレッソをお腹に収めてから、おもむろにバッグから取り出したのは二通の封筒だ。


「宇髄課長、伊黒課長。ご都合が宜しければ、ご出
　席お願い致します」


一通ずつ両手で持ち、それぞれに差し出した招待状。


「おー、オレ様に寄越さなかったら冨岡ボコるとこ
　だったわ」


宇髄課長はニヤニヤしたまま受け取り、伊黒課長は少々、驚きを隠せていない。


「……宇髄はわかるが…」


「確かに私達は伊黒課長の部下ではありませんでし
　たが……個人的に可愛がって頂いていると思ってい
　ますので」


もちろん冨岡もです、と頷いてみせれば、ようやく細められたオッドアイズ。




決して大袈裟に言っているわけではない。


言葉足らずで誤解されがちなあの彼を、仕事のやり方という焦点で評価してくれているのは、宇髄課長だけではなく、伊黒課長も同じだ。




「……万事繰り合わせて出席させて頂こう」


「あ、お前オレのセリフ取んなよ!」


ド派手にキメてやろうと思ってたのに、と舌打ちする宇随課長に笑ってから、宜しくお願いします、と頭を下げたのだった。









今日の目的も果たせた有意義なランチを終え、横浜の営業所へと戻った。


PCの画面に貼り付けられた伝言メモに緊急のものがないことに安堵してから、デスク上の電話へと手を伸ばす。





お互いの家族に結婚の報告を終えてからは、話は具体的にどんどん進んでいった。


式はどこで挙げるか、披露宴は、など途端に決めなくてはならない事が降ってきて、二人で慌てて情報サイトを覗いてみたり。

そんなことすら楽しく思えるのはきっと。



ーーー お似合いだと思うぜ?



その相手が、義勇だからなんだろう。









会議に出ていた分遅れ気味だった業務をなんとかこなし、通勤のために借り換えた自分のマンションへと帰ってきた。


横浜港そばの営業所へ通うには車が必須だから、通勤中には触れないスマホの画面を明るくする。

通知は3件、そのひとつは彼。


(お疲れ様。今帰った)


20分前に入っていたそれに同じ内容の返信をすると、すぐさま付いた既読、続いた着信音に口角が上がった。


(おかえり)


画面に浮かんだ愛しいその顔に、口角ばかりでなく、頬まで緩むのを自覚する。


「ただいま。今日は義勇の方が早かったね」


そのようだな、と微笑む彼には来週末まで会えないと考えれば、理屈などなく。


恋しくなった、あの温かな匂い。



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