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「ごめんお先………ちょっと、お腹鳴ったわ今」
私がシャワーを終えるのを見計らったように、実弥はキッチンでフライパンを振るっていた。
軽々とフライパンを持ち上げ、器用にご飯を炒める姿は何だかシェフみたいだ。
私アレ、未だに出来ないんだけど。
一段と部屋の中で濃さを増した香りに、結構な大きさでお腹が鳴る。
「もう出来っから、座ってろや」
「ありがと。お皿出すね」
実弥の脇にオムライス用のお皿を置き、ダイニングテーブルにはランチョンマットを敷いて。
バターの香りを堪能しながら飲み物を用意して、いそいそと席につく。
「お待たせェ」
コトリと目の前に置かれたお皿からは香しい湯気が上がり、鮮やかな赤と黄に頬が緩んだ。
イタダキマス、といつもより丁寧に手を合わせて、いざ一口。
「………これは……バターの香り濃厚でとろけるような
半熟のオムレツ、その中からは甘さと酸味のバラ
ンスが絶妙なケチャッ、」
「食レポはいいから冷めねェ内に食ェ」
「はい!!」
店長もよく同じこと言うんだよな、確かに料理は出来たてが美味しいけども。
「美味い!! わっしょい!!」
「美味ェってのはともかく、わっしょいって何だ
よ」
「スマンな、何か急に脳内に降臨してきたわ」
いやでもホントに美味しい…!!
ちゃんとkaburaのオムライスだよこれは。
「実弥にお嫁に来てほしいんだが」
あまりの美味しさに、つい漏れてしまったそんな感想。
お嫁はさすがにないか、と苦笑すれば、案の定目の前で、思いきり嫌そうな顔をしてみせる彼。
「ごめん違うの、今日の面接すっごい疲れたから
さ……でも帰ってきたら、こんなに美味しいご飯用
意してもらってたじゃん?」
幸せだなって思ったワケよ、と続けると、その表情は少し和らいだ。
「ま、今日はいつもより疲れてそうだったよなァ」
「だねー。社会人って大変なんだな、って思った」
「バイトとは責任も比じゃねェだろうし」
うんうん、と頷きながら、スプーン山盛りにしたオムライスを口に運んでいく。
キミが作ってくれた美味しいご飯を、キミと向かい合って食べて。
それだけで疲れなんて、吹っ飛んじゃいそうだって。
(我ながら単純)
「……ンじゃ、今夜はとことん甘やかしてやンよ……
オレが」
ニッと意味ありげに笑ってみせた彼には、どうかお手柔らかに、と返しておいた。
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ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» しれっと続き書いててゴメンナサイww それでもコメまで残してくれるアナタが大好きです♡ ぎゆさんには幸せになって欲しい願望、わかってもらえて嬉しい!! (2021年12月27日 14時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - 続きをありがとう!完全なハピエン!!こういうトーンのお話、ぎゆさんとっても似合う!そんで、ひよちゃん本当に書くのがうまい!言葉に出来ない程ぎゆさん幸せにしてくれてありがとう!!!(秒飛び出来なかったから拗ねて一日コメントしに行かなかったんじゃないよ!) (2021年12月26日 23時) (レス) @page50 id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - りりちゃんコメントありがとうございます!! この前の塩辛さから一転、せっかくのバースデーなので甘いのにしました!! 笑 実弥くんと酒飲みたい私の願望……笑 (2021年11月30日 21時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あいすさん» あいすさん、コメントありがとうございます!! そう言って頂けて本当に嬉しいです!! 少しずつオトナになっていく実弥くんも、中々良いですよね……あいすさんも更新頑張って下さい!!、 (2021年11月30日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» コメントありがとうございます!! 告知スマンな、、でもすぐ読みにきてくれるキミが大好きです 笑 バースデー連載お疲れ様♥ 私も書けそうな時にボチボチ頑張りまーす!! (2021年11月30日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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