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side冨岡義勇
まあでも、と続けた左隣へと意識を戻す。
「憧れは無くもないよ、私でも」
ふふふ、とくすぐったそうに笑う彼女は、いつも纏っているものより柔らかい空気だ。
仕事は隙も無くこなす事が多く、周囲からの印象はきっと「しっかりしている」とか「冷静沈着」といったものだろう。
実際自分だって、そんな彼女には散々、世話も迷惑もかけてきたけれど。
時折みせるこの柔らかさを知っているのは、自分くらいじゃないかという自負だけはあった。
それだけ長い間。
彼女と一緒に過ごし、彼女を見つめてきたのだから。
「……早く帰ろう」
一週間振りに会えた昨夜と同じセリフを、つい吐いてしまったオレを許すように、彼女は小さく頷いたのだった。
早く早くと急くように辿り着いた彼女の部屋で、玄関の鍵をかけたらすぐ、その身体を抱き寄せる。
「……まだ靴も脱いでないよ」
困ったような顔に煽られて重ねた唇からは、ほんの少しアルコールの香り。
「余裕が無いのは自覚している」
「……そんなに?」
「これまで我慢し過ぎたから、だろうな」
その言葉と共に吐き出した息はもう熱く、あまりにも格好悪いだろうかと不安を覚えかけた時。
ス、と左頬をなぞってきた指先にも、自分と等しく同じ熱が宿っていることに気づく。
「……まあそれは……私も同じ、かな」
頬から耳へとそれは移り、オレの髪へと差し入れられた。
「……いい大人なのに、みっともないか」
「ふふ……それも同じ。いいんじゃない? 自覚して
るなら」
そうして背伸びをした彼女の唇に、オレのものは捕らえられる。
触れるだけのそれではもう、足りないから。
離れかけた彼女の顎先を掬ってもう一度それを重ね、図ったように薄く開けられたところへと押し入った。
「……ん、…っ…」
すぐさま漏れる吐息に、背中から震えが走る。
もっとそれを聞きたいと欲張りながら、温かな口内を優しく荒らした。
「……は、」
「……今日も……一緒に浴びるか」
これも昨夜と同じ願望を耳元で囁くと、照れたようにオレの胸元へ顔を押しつけてくるAが、どうにも可愛らしくて。
「早めに上がる努力はする」
「……嘘ばっかり」
確信があるかのように腕の中で呟かれては、苦笑するしかない。
……それでもやっぱり、自信はあるのだ。
早く入ろう、と小さく囁いた彼女が、オレにはとてつもなく甘いことに。
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ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» しれっと続き書いててゴメンナサイww それでもコメまで残してくれるアナタが大好きです♡ ぎゆさんには幸せになって欲しい願望、わかってもらえて嬉しい!! (2021年12月27日 14時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - 続きをありがとう!完全なハピエン!!こういうトーンのお話、ぎゆさんとっても似合う!そんで、ひよちゃん本当に書くのがうまい!言葉に出来ない程ぎゆさん幸せにしてくれてありがとう!!!(秒飛び出来なかったから拗ねて一日コメントしに行かなかったんじゃないよ!) (2021年12月26日 23時) (レス) @page50 id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - りりちゃんコメントありがとうございます!! この前の塩辛さから一転、せっかくのバースデーなので甘いのにしました!! 笑 実弥くんと酒飲みたい私の願望……笑 (2021年11月30日 21時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あいすさん» あいすさん、コメントありがとうございます!! そう言って頂けて本当に嬉しいです!! 少しずつオトナになっていく実弥くんも、中々良いですよね……あいすさんも更新頑張って下さい!!、 (2021年11月30日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» コメントありがとうございます!! 告知スマンな、、でもすぐ読みにきてくれるキミが大好きです 笑 バースデー連載お疲れ様♥ 私も書けそうな時にボチボチ頑張りまーす!! (2021年11月30日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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