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side不死川実弥
いつもの、とオーダー出来る程度には常連となったオレに、宇髄は吹き出している。
「ある意味めちゃめちゃ貢いでんな、不死川」
「あははは、それなー」
宇髄の感想に、カウンターの内側のAさんまでが同意して、ケラケラと笑った。
「せっかくのバイト代、あんま突っ込まないでよ?
胸が痛むわ」
無事に第一志望へ合格した直後から、一足先に美大への進学を決めていた宇髄と共に、短期バイトを始めていた。
身体はキツくても、すぐにバイト代が出るそれは、春休み中の学生にとっては救世主。
だから彼女がバイトの日はこうして、この店にも通えるのだ。
「あと20分くらいで上がれそうだけど」
「ンじゃ、席で待ってるわ」
バイト上がりの時間を告げた後、ごゆっくり、とお決まりのセリフを投げた彼女に頷いてから、宇髄と連れ立ってフロアへと向かう。
空いているとつい選んでしまう、大きな窓に面した席に陣取った。
「しっかしこのラテアート、相変わらずド派手だ
な!!」
オレがまだAさんと付き合う前、一緒にここへ来た時にもオーダーしたそのマグを覗き込んで、宇髄は感心したような声を上げる。
「店長の奥サン、お前の美大の卒業生らしいぜェ」
「へー、先輩か」
頂きますセンパイ、とラテアートに向かって手を合わせた宇髄に笑っていれば、テーブルに近づいてきた影。
「今日も来たのか。ありがたい話だが、アイツのシ
フトの度だと小遣いに困るだろう」
目の前に置かれたのは「いつもの」宇治抹茶と小豆のパンケーキと。
「いや、オレこそ毎回ンなサービスしてもらっちま
って」
香ばしい湯気を上げるフレンチフライの山に、ご馳走様ですと頭を下げた。
以前、すみません、と伝えたら「こういう時はご馳走様と言え」と眉をひそめたこの店長のことは、わりと好きだ。
「短期のスけど、バイトもしてますし。高校の頃よ
りゃかなりマシなんで」
そうか、と相槌を打ってから、店長は少し考えるような素振りをみせる。
「……短期ということは、それが終わればまた別のバ
イトを探すのか」
「はい。大学始まって、週のスケジュール決まった
ら考えます」
教員免許も取るつもりでいるから、授業との兼ね合いは大事だ。
「ここで働くか?」
予想外のお誘いに、はァ?とマヌケな声を漏らしたオレに小さく笑ってから「考えてみてくれ」と言い置いて、店長はキッチンへと戻っていった。
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ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» しれっと続き書いててゴメンナサイww それでもコメまで残してくれるアナタが大好きです♡ ぎゆさんには幸せになって欲しい願望、わかってもらえて嬉しい!! (2021年12月27日 14時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
あさひゆうひ(プロフ) - 続きをありがとう!完全なハピエン!!こういうトーンのお話、ぎゆさんとっても似合う!そんで、ひよちゃん本当に書くのがうまい!言葉に出来ない程ぎゆさん幸せにしてくれてありがとう!!!(秒飛び出来なかったから拗ねて一日コメントしに行かなかったんじゃないよ!) (2021年12月26日 23時) (レス) @page50 id: 9c7376e839 (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - りりちゃんコメントありがとうございます!! この前の塩辛さから一転、せっかくのバースデーなので甘いのにしました!! 笑 実弥くんと酒飲みたい私の願望……笑 (2021年11月30日 21時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あいすさん» あいすさん、コメントありがとうございます!! そう言って頂けて本当に嬉しいです!! 少しずつオトナになっていく実弥くんも、中々良いですよね……あいすさんも更新頑張って下さい!!、 (2021年11月30日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
ひよ(プロフ) - あさひゆうひさん» コメントありがとうございます!! 告知スマンな、、でもすぐ読みにきてくれるキミが大好きです 笑 バースデー連載お疲れ様♥ 私も書けそうな時にボチボチ頑張りまーす!! (2021年11月30日 20時) (レス) id: a2712468ed (このIDを非表示/違反報告)
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