【あんスタ】おおうそつき【深海奏汰】 (ページ10)

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潜む怨霊/4 ページ10

「夏目くん」

「師匠……」

　五奇人・日々樹渉の『処刑』が執行されたあと、特に何者でもなくなった彼が会いに来た。

「これでいいんです」

「嘘、嘘。だって、だってこれは……」

「夏目くん」

「うるさい！」

　つい、余韻を残す語尾も忘れてそこにあった試験管を投げてしまった。

　師匠を通りすぎて、壁にぶつかり液が飛び散る。

　それに伴って赤黒くなっていく壁。基本人に無害なものしか置いていないから、壁の成分にでも反応したのか。

　そういえば、あの液体はなんだったのだろうか。

＊

「……とまァ、こんなくだらない喧嘩みたいなことでつけちゃったんだよネ。」

「なんかすごいこと聞いた気がする」

「別にもうそれは気にしてないけド。」

「とかいってひきずってません？」

「それは『処刑』のことだケ。……デ、他にハ？」

「よなかに、『へんなおと』がきこえるってうわさもあります」

「……あァ、それはボクじゃないヨ。」

「じゃあ何でこんな夜中にいるのよ？」

「結構入り浸ってるから割といつものことなんだけド……そうだネ、今日なら聞こえるんじゃないかナ？」

「は？」

「日付を跨いだ頃にまた来てみなヨ。ボクはここで待ってる、鍵は開けておくかラ。」

＊

──ドンドン！ガン！

「来たネ」

「……何これ」

「わたるですね」

「わたる？」

「日々樹渉。キミの言う五奇人、基い三奇人の一人サ」

　奇怪な音の中心部には、真剣な顔で板に釘を打ち付ける髪の長い人がいた。

　逆先はその横で本を広げてこちらに視線を向けている。

「おとの『しょうたい』が、わたるなんですね」

「そウ。ここは一応防音だから大道具作りにもってこいなんだってサ。夜中だから静かすぎて外に漏れていたんだろうネ。どウ、満足？」

「あぁ、うん。じゃ、これ(動画)編集して佐賀美センセーに報告か～……」

「何やってるかは知らないけド、大変そうだねェ。ボクも気が向けば手伝うかラ、また今度ここに来てみなヨ。暇潰しくらいにはなるかもネ？」

「はいはいありがとうございまーす。奏汰先輩、解決したんで編集作業手伝ってください」

「はぁ～い♪」

　これにて、怨霊の噂は解決。次第に噂もなくなっていった。

　それと同時に、演劇部が影でリスペクトされるようになったのはまた別の話。

「……なんかほわっとした事件しかありませんね」

「ぎゃくに『さつじんじけん』でもあったら『あいどる』どころじゃないです」