それぞれの思い/3 ページ37
「ねぇねぇ、Aちゃん」
「はい」
「……ふむ、下手だね」
「「は？」」
私と漣さんの声が重なる。
思わず視線を合わせると、すみませんとでもいうように頭を下げてきた。
渋滞に巻き込まれてから無事目的地に着き、七種さんに謝り倒して元夢ノ咲生徒の二人を回収した今日この頃。
急に巴さんに言われた。
「笑顔だよ。え・が・お。この間と全く同じの無表情。ちょっと笑ってみなよ」
「……」
「うん、全然だめだね。目が笑ってない。」
「……茨みたい」
「えっ、自分こんなんですか？」
会議場所、といっても普通の小さな市民センターの一室を貸しきっているだけだが。
少し気分が悪くなったから、窓の外に視線を逃がした。
「……Aさん、大丈夫っすか？すみません、うちのおひいさんが」
「いえ」
漣さんは優しいけれど、『Eden』はどうも苦手だ。
＊
「集まってるな」
「おや、右手の人。遅いですよ？」
「それはすまん、手が足りなくてな。猫の手も借りたいくらいに忙しいんだ」
五奇人と生徒会の副会長という、なんとも奇妙な面子。
本来ならば、ここに天祥院もいるはずだったのだが。
まぁ、病弱ゆえに床についているのならば致し方ない。
「それで、用件とは？」
「まずはまとめて連絡することだ。よく聞け」
Aのことかと思ったが、普通に留年だのそこら辺の注意事項。
割と真面目な宗でも危ないらしい。
「……それと、深海にこれを渡しておく」
「……なんですか？これ。がいこくの『おかね』かなにかですか？」
「んなわけあるか。Aの私物だ。アイツが帰ってきたら渡しておけ｣
「はぁい」
あっけなく解散。私達の奇行を注意する気力もないのか、フラフラと来た道を引き返していった。
＊
「これ、『おみず』につけちゃったら『さび』がつきますかね？」
「……」
「なっちゃん？」
「ごめン……奏汰兄さん……ちょ、ボク限界……」
急に奏汰に向けて倒れ込む夏目。
思えば、いつもより口を挟んでもいなかったし顔色も悪い。
渉や宗、零はそそくさと戻ってしまっているし、どうしたものか。
「なっちゃん、なっちゃん。だいじょうぶですか？はなせますか？」
「ゴメン……最近ロクに寝てないからサ……」
「……しつれいします！」
奏汰も奏汰で心の余裕がなかったのか、容赦なく夏目を担ぎ上げたのが見えた。
「……何あれ？」
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作者名：竜花 | 作成日時：2019年5月26日 12時
